関東に雪を降らせる低気圧は、いわゆる「南岸低気圧」だ。前線を伴う温帯低気圧で、日本の南海上を進み、広範囲に雨や雪をもたらす低気圧のことをそう呼んでいる。直近では、1月22日、今年はじめて関東甲信地方で雪が降った際にも、南岸低気圧が日本列島の南海上を通過していた。

2018年1月22日18時の天気図。文字通り、日本列島の南にある低気圧が「南岸低気圧」だ。(気象庁ホームページより)
2018年1月22日18時の天気図。文字通り、日本列島の南にある低気圧が「南岸低気圧」だ。(気象庁ホームページより)

 南岸低気圧にともなう雲の中で雪ができる物理的な過程だけでなく、それが地上に落ちてきた時に、雪のままなのか、雨になっているか、非常に多くの要素がかかわっている。これが日本海側なら、大陸からの寒気が吹き出してきて、相対的に温かい日本海から熱と水蒸気を得て発達した積乱雲が来ると、気温が低いため問答無用で雪という状況らしいが、関東の場合、雨なのか雪なのかなかなか定まらない。けれど、雨の場合と雪の場合では、社会生活への影響はまったく違ってしまう。

 予報精度を高めるためには、現象を理解しなければならず、それには従来以上の観測が必要になる。どうすればいいのか。突破口の1つが、市民が参加する「#関東雪結晶 プロジェクト」なのだった。

「#関東雪結晶 プロジェクト」のサイトは<a href="http://www.mri-jma.go.jp/Dep/fo/fo3/araki/snowcrystals.html" target="_blank">こちら</a>。(気象研究所のホームページより)
「#関東雪結晶 プロジェクト」のサイトはこちら。(気象研究所のホームページより)

つづく

(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版サイトに掲載した記事を再掲載したものです)

荒木健太郎(あらき けんたろう)
1984年、茨城県生まれ。雲研究者。気象庁気象研究所予報研究部第三研究室研究官。「#関東雪結晶 プロジェクト」主宰。気象庁気象大学校卒業。地方気象台で予報・観測業務に従事した後、現職に至る。専門は雲科学・メソ気象学。防災・減災に貢献することを目指し、豪雨・豪雪・竜巻などの激しい大気現象をもたらす雲の仕組みと雲の物理学の研究に取り組んでいる。著書に『雲を愛する技術』(光文社新書)、『雲の中では何が起こっているのか』(ベレ出版)などがある。
ツイッターアカウント@arakencloudで雲の写真や情報を日々発信中。
川端裕人(かわばた ひろと)
1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、『天空の約束』(集英社文庫)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)とその“サイドB”としてブラインドサッカーの世界を描いた『太陽ときみの声』(朝日学生新聞社)など。
本連載からは、ホモ・サピエンス以前のアジアの人類史に関する最新の知見をまとめた近著『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社ブルーバックス)をはじめ、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめた『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
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