
「2014年2月に関東で大雪があったじゃないですか。あれがきっかけなんです。関東平野では年に数回くらいしか積雪がありませんけど、少しの雪でもかなり影響が出ますよね。それなのに、予測の精度が良くないことが多いんです。最近は数値予報モデルとかが発達してきて、スーパーコンピュータもどんどん性能がよくなって、細かい現象が解像できるようになっているのに、低気圧ぐらいのわりと大きなスケールの現象が予測できないっていうのは、実は関東の雪くらいなんです」
関東の雪というのはたしかにやっかいだ。しょっちゅう降るわけではないから、社会的なインフラが整備されておらず、少々の積雪でも交通が止まり、日常生活が破綻する。車がスリップして負傷事故が多発し、時には亡くなる人もいる。雪国の人からは対策不足をよく揶揄されるし、それはまっとうな意見なのだが、それでも、雪が降るごとにトラブルが起きる。

2014年2月14日から15日にかけて関東甲信地方を襲った豪雪は、埼玉県秩父市で98センチ、熊谷市62センチ、栃木県宇都宮市で32センチと、過去の観測記録を塗り替えた。また、山梨県甲府市では114センチ、河口湖では143センチというとんでもない積雪があり、一時、交通が遮断された。ここまでくれば、雪国の人にも「トラブルが起きて当然」と納得してもらえるかもしれないものの、それほどに大きな気象を予測するのが難しいというなら、それはやはりとても困る。
「関東の雪が予測しにくい理由は、結構複雑です。そもそも、その現象がどういうものなのかっていうところまで、まず理解ができてないんですね。低気圧に伴って雪が降るというのはまさにそのとおりなんですけれども、予測するためには、まず低気圧の発達度合いですとか、雲がどう広がって、その雲の中にどういう粒子があるのか、それがどういうふうに成長して降ってくるかっていうのか、まず知る必要があります。で、降ってきた雪とか雨が、地上付近の空気を冷やして、より雪が降りやすくするような状況を整えるので、正確な予測には、地表付近の状態も含めて全部、考えないといけないんです」
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