全7113文字

青瓦台より日本メディアを信頼

「言い訳」を180度変えたことに関し、韓国メディアはどう書いたのですか?

鈴置:無視することにしたようです。そのおかしさに触れた大手メディアの記事は見当たりません。

 もちろん韓国の記者もバカではありませんから「あれっ」と思ったでしょう。読者の書き込み欄を見ると、政府の説明を信じ「日本機を撃墜すべきだった」という反応がある半面、「政府は見苦しい言い訳はもうやめろ」といったものがあります。

 例えば12月24日の国防部の「火器管制レーダーの照射は一切なかった」との発表を報じた朝鮮日報の記事「軍『日本の哨戒機を追跡すべくレーダーを運用したことはない』」(12月24日、韓国語版)の書き込みには以下があります。

  • 言い訳丸出しの言い訳は国の威信を貶める。左派の乗組員が戦争ゲームをしたのだ。青瓦台(大統領府)のゴミどもより日本のメディアの方が信用できるなんて。
  • 一日ごとに新しい説明を作り出す国防部の言葉通りなら結局、火器管制レーダーは北朝鮮の漁船救助作業とは関係なく、日本の哨戒機を照射したことを認めたのだ。カメラの電源を入れれば火器管制レーダーも一緒に回ることを知っていながら稼働したということは、日本の哨戒機がレーダーに照射されようと関係ないという未必の故意があったということだ。

 いずれも、韓国政府が信じられなくなったが故の書き込みです。そりゃそうです。「照射した」が突然「照射しなかった」との説明に変わったのですから。

突っぱねれば日本は引っ込む

だったらなぜ、韓国紙はその変節を指摘しないのでしょうか。

鈴置:初めの段階で「韓国政府の説明が正しい」との前提で社説を書いてしまったからでしょう。もちろん政府の言い訳が180度変わったことを基に、社説を軌道修正する手はあります。

 ただ、「我が海軍は北の漁船を救け、それを日本機が邪魔しようとしたのだ。火器管制レーダーを使ったとしても、正当防衛だ」と信じている人も多い。

 今になって記事を修正して政府批判すれば「国家反逆新聞」の烙印を押されかねない。メディアとすれば、この問題が収束するのを待つ方がいいのです。

 根っこには「突っ張っておけば日本はあきらめて引っ込む」との判断があります。これまで日本は韓国の滅茶苦茶な行動に怒って見せても、さしたる報復はしなかった。だから今度も、適当なことを言ってうっちゃっておけばいい、というわけです。

ところで北朝鮮の漁船を助けたというのは本当ですか?

鈴置:レーダー照射した韓国の駆逐艦が救助したのではありません。海洋警察の警備艦が助けたのです。海軍の駆逐艦も一緒になってレーダーで捜索し実際には、警備艦が救ったと発表されています。

 もっとも、北朝鮮の漁船を助けるためにわざわざ駆逐艦が出動したというには不自然です。遭難海域に海洋警察の警備艦がいたのですから。