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減っていく外貨

「勘違いするなよ」と南北朝鮮にクギを刺した……。

鈴置:それも、「最後には物理的手段がある」とドスを利かせています。この話は直ちに平壌に伝わったと思われます。なにせ対北放送の責任者に語ったのですから。

 北朝鮮の10月の学習会でも「自力更生」「自給自足」が強調されたそうです。もっとも金聖玟代表によると、当局に対し国民からは「これ以上の自給自足は無理だ」「(1990年代半ばの飢餓の時のように)もう一度、山に入って松の皮を食えと言うのか」などと反発があがっているそうです。

 10月に米国が中国共産党との戦いを宣言しました(「中国との冷戦を宣言したペンス副大統領」参照)。

 一時期は対北制裁を緩めたと報じられた中国ですがこれ以降、比較的まじめに制裁を順守しているようです。制裁を破ったと因縁をつけられ、米国の怒りに油を注ぎたくはないのでしょう。

 韓国は北朝鮮産石炭の輸入など露骨な制裁破りを繰り返してきました(「『言うことを聞け』と文在寅を叱ったトランプ」参照)。

 が、北との取引に動く韓国の銀行や財閥に対し、米国が制裁――2次制裁ということになりますが、これをチラつかせて牽制しています。

 韓国から資金逃避が起き始めている。そんなガソリンの蒸気が部屋に満ちている今、韓国の銀行や財閥に対する2次制裁は部屋のなかでマッチを擦ると同然です(「IMF危機を思い出す韓国人」参照)。

 昨年秋に強化された制裁により、北朝鮮は外貨建て輸出が激減しました。一方、中国からの禁輸品以外の輸入は続いている。手持ちの外貨を使って食糧輸入を維持しているわけですが、「外貨の貯金」がいつまで持つか不明です。

「人権」を言いだした米国

北朝鮮経済は相当に苦しい……。

鈴置:それも先細りです。だからこそ「使い走り」の文在寅大統領が、世界の顰蹙も無視して制裁緩和を訴え続けているわけです。

 北朝鮮がショックを受けたのは、経済制裁が緩まないどころか、人権問題を米国がこと挙げし始めたことでしょう。

 12月10日、トランプ政権は人権侵害を理由に朝鮮労働党幹部と北朝鮮政府の3人を制裁対象にすると発表しました。

 AFPの「米、北朝鮮高官3人に人権侵害で制裁 金委員長の右腕も対象」(12月11日、日本語版)などが報じました。

 制裁の内容は在米資産の凍結などで実効性は低いのですが、北朝鮮当局は頭を抱えたと思います。6月の米朝首脳会談後、初めて米国が再び「人権状況の改善」を北に突きつけたのです。「人権問題のデパート」である北朝鮮にとって、これを指摘されたら手も足も出ない。

 制裁を所管する米財務省は「ワームビア(Otto Warmbier)氏の事件がこの制裁の背景にある」とはっきり表明しました。発表文はここで読めます。

 ワームビア氏は北朝鮮を旅行中に逮捕され、1年半後の2017年6月に米国に送り返されましたが、帰国直後に亡くなった米国の青年です。家族は拷問の末に殺されたと主張しています。

 そのワームビア氏の家族は北朝鮮に対し11億ドルの損害賠償を要求しました。米政府系のVOAが「12月17日に確認した」として報じました。

 「ワームビア家族、北朝鮮に賠償額11億ドルを請求…『懲罰的な賠償判決で北朝鮮を処罰せねばならない』」(12月18日、韓国語版)です。