奇襲か妥協か

 トランプ政権は北朝鮮の核問題の解決に早急に動く気配だ。5回目の核実験(2016年9月9日)以降、米国の安保専門家は大声で「北の核・ミサイル施設への奇襲攻撃」を語り始めた(「米国が北朝鮮を先制攻撃する日、韓国と日本は?」参照)。

●北朝鮮の核実験
回数実施日規模
1回目2006年10月9日M4.2
2回目2009年5月25日M4.7
3回目2013年2月12日M5.1
4回目2016年1月6日M5.1
5回目2016年9月9日M5.3
(注)数字は実験によって起きた地震の規模。米地質研究所の発表による。

 奇襲攻撃により北朝鮮の核が除去された場合、韓国の左派政権は米韓同盟の破棄に動く可能性がある。主敵の脅威が減じた以上、中国との関係を悪化させる米韓同盟は邪魔になるからだ。

 一方、米国が電撃的に北朝鮮と妥協すると予測する向きもある。北が核・ミサイル開発を凍結すれば、見返りに平和条約を結ぶ、との構想だ。在韓米軍の撤収――さらには米韓同盟廃棄の呼び水となる。韓国に左派政権が誕生すれば、その可能性がぐんと増す。

 米韓同盟が消滅すれば日本は盾を失い、直接、大陸と向き合うことになる。日本にとって「凶」だ。

「離米」すれば中国側に

 日本はどう動くか。「トランプの米国」が韓国を見捨てるのを食い止めるのは難しい。結局、「韓国の見捨て方」の中で「日本にとって最も有利な形」へと誘導することになろう。まず、国際関係の激変を利用して、北朝鮮から拉致被害者を取り返す必要がある。

 もし日本に戦略家がいるなら、朝鮮半島全体の法的な中立化を目指すに違いない。放っておけば、米国から離れた韓国が中国に引き寄せられるのは確実だ。経済的な依存と軍事上の位置、そして長らく中国大陸の王朝に冊封していた歴史からである。

 米国から離れた韓国の港湾は中国海軍の根拠地となり、日本の安全を脅かすことになる。北朝鮮の港を含め朝鮮半島にはどこの国の軍艦も出入りできないようにするなど、歯止めが必要だ。

 もちろん「法的な中立化」が長続きするかは分からない。朝鮮半島の内部は常に不安定だ。そこに住む人々は周辺大国の力を借りて身内の敵に勝とうとしてきた。「法的な中立化」は一時しのぎの「中吉」に終わるかもしれない。ただ、半島全体が完全に中国化する「凶」よりはまだましなのだ。

※近未来小説『朝鮮半島201Z年』(2010年刊)は韓国の「離米従中」と朝鮮半島の中立化を予想した。

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。