離米は「トランプ」が先導

安保問題に関しほかの候補は?

鈴置:野党候補は皆「3点セット」見直し論です。要は「離米派」ばかりです。朴大統領の行ったことはすべてひっくり返す、というのが今の韓国のムード。「ABP(Anything but Park)」なのです。

 中でも、この3点セットは朴槿恵大統領の「悪行中の悪行」とされています。大統領選に立候補する者なら「NO!」と叫ばなくてはなりません。

 激しい発言から「韓国のトランプ」と呼ばれる李在明(イ・ジェミョン)城南市長の発言に注目する必要があります。李在明市長は「日本は敵性国家だ」とまで言い出し、それを理由に「3点セット」に強く反対しています。

 支持率調査あるいは人気投票で2位、あるいは1位に付けることもある政治家です。この人の発言に引っ張られ、与党系含めすべての候補が「反日・離米」に傾いて行くと思います。

「油ウナギ」の潘基文

保守・中道から出馬すると言われる国連事務総長の潘基文(バン・キムン)氏も、ですか?

鈴置:潘基文氏は「慰安婦合意」に関しては歓迎を表明したことがあります。中央日報が「潘基文国連事務総長『朴大統領の慰安婦妥結勇断、歴史が評価』」(1月4日、日本語版)で報じています。

 ただ、この人の韓国でのあだ名は「油ウナギ」。状況に応じて姿勢をコロコロ変えるので有名です。慰安婦合意の直後は、朴大統領を援護射撃するために「歓迎」を表明したのでしょう。

 でも、今や「韓国人の憎悪の的」となった朴大統領とははっきりと距離を置いています。むしろ「離朴」の証拠として「慰安婦合意の見直しを要求する」と言い出すかもしれません。もともと、反米で鳴らした盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の外交通商部長官だった官僚です。

GSOMIAやTHAADも見直すつもりでしょうか?

鈴置:その可能性が大いにあります。この人は「中国に弱い」のでも有名です。潘基文氏は2015年の天安門の軍事パレードを参観しました。

 その際、会談した習近平主席に「この行事によって、平和を守るという中国の人々の願いが存分に示された。中国は長年にわたって国際平和・開発事業に積極的に尽力してきた」と称賛したのです(「『中国の尻馬』にしがみつく韓国」参照)。

 米国のアジア専門家の中には「この男が大統領になったら、韓国は完全に中国側の国になる」と言い切る人もいます。

 国連事務総長になれたのは米国の強力な後押しがあったからです。でも、米国にすれば「やらせてみたら中国の言いなりだった」のです。

中国が決める韓国の進路

でも、潘基文氏は韓国ではそれなりの支持率を維持しています。

鈴置:保守としては他に選択肢がないのです。世論調査でも、5%以上の支持を獲得できる保守の大統領候補はこの人しかいないのです。

逆に、野党候補の中に「当選するまでは『離米』だけれど、当選したら米韓同盟を熱心に維持する人」は出てきませんか。

鈴置:安哲秀(アン・チョルス)「国民の党」共同代表はそうかもしれません。「経済はリベラル」を標榜していて財閥には厳しい。でも「政治は保守」をうたっていますから。

 ただ、この人を含め、韓国の政治家は外交政策を自ら選択できなくなっています。中国が圧力をかけ続けているからです。それに抗してTHAADやGSOMIAに賛成できる政治家がいるかは、大いに疑問なのです。

次回に続く)=12月27日掲載予定