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金泳三のデジャヴ

金泳三政権は危い状況に気が付かなかったのですか?

鈴置:大統領選挙を控え野党との政争に没頭するあまり、経済にまで気が回らなかったのです。政権末期で士気が落ちており、重要な情報が大統領に上がらなかった、とも言われています。

 次の大統領選挙は2022年なので、現在は政権末期ではありません。が、文在寅政権も経済音痴ぶりを発揮しています。

 「所得を増やせば景気はよくなる」との単細胞的な発想で、最低賃金を一気に1割以上も引き上げました。

 多くの零細・中小企業の採算が取れなくなり、従業員を解雇したり廃業に追い込まれました。その結果、若者の雇用は減少し、景気も悪化しました。

 政策ミスが明らかになったにもかかわらず、文在寅政権は軌道修正しません。「現実から目をそらすな」と韓国各紙は激しく批判しています。この辺りも「金泳三のデジャヴ」なのです。

 そんな状況下で、日本との関係悪化が新たな懸念材料に浮上しました。韓国経済新聞は韓国政府が慰安婦合意を事実上破棄した11月21日、社説「外交がせねばならぬこと、してはならぬこと、見分けているか」(韓国語版)で以下のように書きました。

  • 国際金融市場の揺れが次第に激しくなる中、通貨スワップの締結が不振だ。カナダ、スイスなどとは結んだが、米国や日本といった重要国とはなしの礫(つぶて)だ。
  • 日本とのスワップ協定は少女像(慰安婦像)などの問題で交渉チャネルまで途絶えた。
  • 「韓国が再び通貨危機に陥った際、以前のように助けてくれる国があるのか」との憂慮が国内外から聞こえてくる。
韓国の通貨スワップ(2018年12月14日現在)
相手国 規模 締結・延長日 満期日
中国 3600億元/64兆ウォン(約523億ドル)終了→再開? 2014年
10月11日
2017年
10月10日
豪州 100億豪ドル/9兆ウォン(約72億ドル) 2017年
2月8日
2020年
2月7日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約79億ドル) 2017年
3月6日
2020年
3月5日
マレーシア 150億リンギット/5兆ウォン(約36億ドル) 2017年
1月25日
2020年
1月24日
スイス 100億スイスフラン/11.2兆億ウォン(約101億ドル) 2018年
2月20日
2021年
2月19日
CMI<注1> 384億ドル 2014年
7月17日
カナダ<注2><注3> 定めず。通貨はカナダドルとウォン 2017年
11月15日
定めず
<注1>CMI(チェンマイ・イニシアティブ)は多国間スワップ。IMF融資とリンクしない場合は30%まで。
<注2>カナダと結んだのは「為替スワップ(bilateral liquidity swap)」で市中銀行に外貨を貸すのが目的。中央銀行に対し市場介入用の外貨を貸す「通貨スワップ(bilateral swap)」ではない。
<注3>カナダとは「規模も満期日も定めない常設協定」と韓銀は発表。英文の発表文では、発動は「市場の状況が許せば」「必要に応じて」としているところから、規模などはその都度協議して決めるものと見られる。
<注4>カッコ内は最近の為替レートによる米ドル換算額
資料:韓国各紙