「双中断」が議題に?

12月14日の首脳会談も「3NO」が主要テーマになるのですか?

鈴置:それも中国は持ち出すでしょうが「凍結対凍結」(freeze for freeze)が議題になるとの観測が出ています。

 「凍結対凍結」は中国語で「双中断」と言います。米韓の軍事演習と北朝鮮の核・ミサイル実験を同時に中断し、これを期に米朝が対話に入って解決を模索する、との案です。

 中国が言い出したこの案に対し米国は、いまさら対話しても北朝鮮に核武装のための時間稼ぎをされるだけ、と拒否しています。

 トランプ(Donald Trump)大統領は「(11月9日の)米中首脳会談で習近平主席と『凍結対凍結』は受け入れないことで合意した」と11月15日の会見で述べました(「第2次朝鮮戦争か、金正恩体制崩壊か」参照)。

 中国外交部の報道官は翌11月16日の会見で、これを否定しませんでした。「双中断が一番合理的な案だ」と語りましたが「双中断は初めの一歩に過ぎない」とも述べ「時間稼ぎに使われてはならない」との米国の主張を認めたのです。

 さらに「朝鮮半島の核問題を解決するいかなる他の提案も我々は歓迎する」と語って、米中の間に「双中断」――「凍結対凍結」を巡る対立はないことを示しました。

 中国外交部のサイト「Foreign Ministry Spokesperson Geng Shuang's Regular Press Conference on November 16, 2017」(11月16日、英語版)で読めます。

北とつるむ文在寅政権

なぜ、「凍結対凍結」が中韓首脳会談の場で持ち出されそうなのでしょう。

鈴置:韓国は「五輪休戦」を名分にした「凍結対凍結」を目指しています。2月から3月にかけて開催される平昌(ピョンチャン)五輪・パラリンピックを理由に、例年3月初めから2カ月近く実施する米韓合同演習を中止し、それを手がかりに北朝鮮を対話に引き出す作戦です(「平昌五輪『選手団派遣は未定』と言い出した米国」参照)。

 この「五輪休戦」により第2次朝鮮戦争を食い止めようと文在寅政権は画策しているのです。そのころまでに米国が北朝鮮を先制攻撃するとの見方が増えていますからね。

 もっとも北は核武装を放棄するつもりは全くありませんから「五輪休戦」で当面の戦争は止められても、北朝鮮の核武装を阻止するチャンスは大きく減ります。北朝鮮の核武装が進み、核による反撃の可能性が高まるほどに、米国は軍事行動をとりにくくなるからです。

韓国は北が核武装してもいいのですか?

鈴置:韓国の親北派の中には「南の経済力と北の核を合わせれば強力な独立国家を創れる」と信じる人がかなりいます。

 韓国の保守は危機感を強め「親北の文在寅政権は北朝鮮の核武装を認めるつもりだ」と国民に訴え始めました(「『北に先制核攻撃も辞さず』と言明した米国務省」参照)。

 14日の中韓首脳会談で「双中断」が論議されるのではないかと指摘したのも、保守系紙の朝鮮日報でした。

 「『THAAD出し惜しみ』に動く中国…複雑になった文大統領の対応策」(12月11日、韓国語版)で「双中断が首脳会談で論議される可能性もある。ただ、青瓦台は一応、否定している」と書いています。

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