悪を叩いて責任回避

 「シンシアリー」のペンネームで日本語のブログを書く韓国人がいます。韓国に対する辛口の評論です。

 11月14日の「デモ参加者、3歳児にピケ持たせて『良い教育の場だった』」はデモ参加者、つまりデモそのものに疑問を投げかけました。

 この記事は1960年の4月革命、韓国での略称は「4・19」――に関して考察していますが当然、現在の「ろうそくデモ」参加者を念頭に置いて書いています。シンシアリー氏は以下のように嘆きました。

  • 李承晩(イ・スンマン)を追い出した419参加者たちが、主に若い学生たちを中心に叫んだのは、「北朝鮮へ行こう。北朝鮮は南韓に来い」でした。
  • 朝鮮戦争が起きたのが、419のわずか10年前。その犠牲の全てを、「李承晩のせい」「強大国のせい」にし、今の自分たちは「正しい」と叫びだしたのです。
  • 彼らは、問題を「直す」ことには最初から興味がありませんでした。そんなことを認めたら、自分たちにも責任が生じるからです。
  • ただ、悪を設定して無慈悲に叩くことで、自分たちが善として、「それらの問題とはなんの関係も無い存在」として君臨したかっただけです。関係は、ある種の責任感でもあります。

 朴槿恵大統領はクーデターで権力を握ったわけではありません。ちゃんとした選挙で過半の票を得て当選しました。集会やデモに参加した人の中にも、朴大統領に投票した人が結構いるはずです。

 シンシアリー氏はデモ参加者の動機に「怒り」よりも「責任回避」を見出したのです。しかも「上」の存在になれるというおまけ付きです。

今のやり方に同調しない人も

これを韓国人が読んだら?

鈴置:ほとんどの人が怒り心頭に発するでしょう。「何を言うか。デモは悪に対する憤怒の表明だ」と。もちろん、その部分もあるのでしょうが。

シンシアリー氏や朴正薫・論説委員の冷静な議論は受け入れられるでしょうか。

鈴置:簡単ではないと思います。下手すると「世界4大革命」の1つを否定すると見なされます。シンシアリー氏のブログの末尾の方にこんなくだりがあります。

  • 率直に言って、もう疲れました。
  • でも、これといって出来ることがあるわけでもなく・・・「朴槿恵を擁護するつもりはないけど、今の韓国のやり方に同調しない韓国人だっている」の一人として存在していることが、それなりの意義なら意義ですが。
  • その意義とやらが、韓国では排斥の対象になってしまいますけど(苦笑

次回に続く)

「国政壟断事件」の動き(2016年)
7月
26日 TV朝鮮「財界の文化財団『ミル』への486億ウォンの募金に青瓦台幹部が関与」
10月
24日 JTBC、大統領演説の草稿など機密資料が崔順実氏に漏えいと報道
25日 朴大統領が資料提供を認めて国民に謝罪
26日 検察が崔氏自宅など家宅捜索。外交資料なども漏洩とメディアが報道
28日 朴大統領は首席秘書官全員に辞表を出させる。秘書室長が辞表提出
28日 韓国ギャラップ「朴大統領の支持率が6週連続で落ち、過去最低の17%に」と発表
29日 青瓦台、検察の家宅捜索を拒否。ソウルで1万人強の退陣要求デモ
30日 青瓦台、検察に資料提供。朴大統領は一部首席秘書官らを辞任させる
30日 与党、挙国一致内閣を提案するも野党は真相究明が先と拒否
30日 崔順実氏帰国、31日に検察に出頭、逮捕状なしで緊急逮捕
31日 リアルメーター「潘基文氏の支持率が前週比1.3ポイント低い20.9%に」
11月
2日 朴大統領、首相を更迭し、後任に盧武鉉時代に要職を歴任した金秉準氏を指名
2日 野党各党、新首相の就任に必要な国会聴聞会を拒否することで一致
2日 検察、安鍾範・政策調整首席秘書官を緊急逮捕
3日 検察、崔順実氏を逮捕。容疑は「安鍾範氏と共に財閥に寄付を強要した」職権乱用など
4日 韓国ギャラップ「朴大統領の支持率は過去最低の5%、不支持率は89%」と発表
4日 朴大統領「検察の捜査受ける」と国民向け談話。野党は「退陣要求運動を展開する」
5日 ソウルで4万5000強人の退陣要求デモ。釜山など他都市にも拡散
6日 禹柄宇・前民情首席秘書官が検察に出頭
7日 与党・セヌリ党の金武星議員、大統領に脱党を要求
7日 朴大統領、与野党代表との会談を提案するも3野党に拒否される
8日 ソウルで4万5000強人の退陣要求デモ。釜山など他都市にも拡散
8日 検察、崔順実氏に関連するとしサムスン電子本社や大韓乗馬協会を家宅捜索
8日 朴大統領、丁世均・国会議長を訪ね「国会が推薦する総理を受け入れ、内閣を任せる」
9日 野党3党、朴大統領の国会推薦総理案を「一考の価値なし。大統領は2線に引け」と拒否
9日 米次期大統領にトランプ氏決定
11日 韓国ギャラップ「11月第2週の大統領支持率は前週と同じ5%。不支持率は最高の90%」
12日 全国で朴大統領の退陣求める集会。ソウルでは26万人参加
13日 検察、「国政壟断事件」でサムスン電子の李在鎔・副会長ら財閥トップを参考人として聴取
13日 青瓦台「昨日、大統領は国民の声を重く受け止めた。国政正常化のため苦心している」
13日 検察、国政壟断事件に関連し朴大統領に15日か16日の参考人事情聴取を要請
13日 金武星・前セヌリ党代表「唯一の収拾策は大統領弾劾」
14日 与野党、国政壟断事件に関する特別検察官の任命で合意
14日 共に民主党、大統領に対する要求を「2線への後退」から「即時退陣」にと強化
14日 秋美愛「共に民主党」代表、早朝に大統領との会談を受諾したものの同日夜に拒否
14日 日韓、東京でGSOMIAに仮署名
15日 文在寅「共に民主党」元代表「条件なき退陣求め在野団体と『非常時局機構』作る」
16日 韓国軍「2017年初めまでにTHAAD工事着工」と発表
16日 朴大統領、釜山の大型不動産開発事業「エルシティ」を巡る疑惑の徹底調査を指示
17日 崔順実氏の国政介入疑惑に関し、特別検察官任命法案と国政調査実施を可決
18日 韓国ギャラップ「11月第3週の朴大統領の支持率は5%、不支持率は90%」
18日 秋美愛「共に民主党」代表「大統領は支持者による衝突と戒厳令を準備している」
18日 青瓦台「東京での韓中日首脳会談の日程が決まれば朴大統領は参加する」
19日 退陣デモ。全国で24万人、うちソウルは17万人(警察発表)。支持デモに1万1000人(同)
20日 検察、崔順実氏らを職権乱用共犯などで起訴。「大統領も共謀と判断、捜査続ける」と発表
20日 朴大統領の弁護士「検察は想像と推測で捜査、対面調査には応じない」
20日 青瓦台「検察の発表は遺憾。特別検察官の捜査で無実を証明する」
20日 野党の大統領選立候補予定者ら8人「国民的退陣運動と平行し弾劾推進論議で合意」
21日 青瓦台スポークスマン、退陣を前提とした野党の首相推薦は拒否
21日 第1野党「共に民主党」と第2野党「国民の党」がそれぞれ弾劾推進を決定
22日 朴元淳・ソウル市長、閣議で閣僚辞任要求と日韓GSOMIAへの反対を表明
22日 崔順実疑惑を解明するための特別検察官任命法案を閣議決定
23日 ソウルで日韓GSOMIA署名・締結。写真撮影禁止に韓国写真記者が一斉抗議
24日 野党3党、朴大統領弾劾で合意
25日 韓国ギャラップ、11月第4週の朴大統領の支持率は4%、不支持率は93%
26日 5回目の退陣要求デモ。参加者はソウル27万人、全国32万人
28日 朴大統領の弁護士「求められた29日までの検察の対面調査は困難」
28日 政界元老集団と与党の「親朴」重鎮議員らがそれぞれ秩序ある退陣を朴大統領に要請
28日 教育部、国定歴史教科書の内容を開示
29日 朴大統領、3回目の国民談話を発表「任期短縮を含め進退は国会にすべて任せる」
30日 野党3党「無条件退陣の要求」と「弾劾推進」で合意
30日 朴大統領、国政壟断事件の特別検察官に元ソウル高検検事長の朴英洙氏を任命
12月
1日 セヌリ党、「4月退陣」を党論に決定
1日 朴正煕元大統領の生家に放火。犯人は「大統領が退陣しないので火を付けた」
2日 韓国ギャロップ、12月第1週の朴大統領の支持率は4%、不支持率は91%
2日 セヌリ党非朴派「12月7日午後6時までに退陣時期明言なければ弾劾に賛成」
3日 野党3党、朴大統領の弾劾訴追案を提出
3日 6回目の退陣要求デモ。参加者はソウル32万人、全国で43万人
4日 セヌリ党非朴派「4月退陣案への大統領の姿勢とは関係なく弾劾訴追案に賛成する」
5日 青瓦台「『4月退陣・6月大統領選』案を朴大統領はセヌリ党員として受け入れる」
6日 国会で「国政壟断」に関する聴聞会。財閥オーナー9人が証人として出席
6日 朴大統領「4月退陣受け入れる。弾劾可決時には憲法裁判所の審理を見守る覚悟」
6日 セヌリ党、弾劾訴追案は自由投票と決定
7日 国会で「国政壟断」に関する聴聞会。証人喚問された崔順実、禹柄宇氏らは欠席
8日 弾劾訴追案、国会本会議に報告。「セウォル号沈没当時の大統領の行為」は削除せず
9日 国会、朴大統領の弾劾訴追案可決。賛成は234票でセヌリ党から62人が賛成

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