世界4大革命の1つに

なぜ、警察発表の数字を見出しに取ってはいけないのでしょうか。

鈴置:韓国人にとって、このデモは「聖なる行為」になったのです。神聖な行事への参加者数を少なめに書いた日本の新聞は、韓国人が一流国民であることを過小評価したと受け取られたのでしょう。

「聖なる行為」ですか。

鈴置:大統領を弾劾に追い詰めた韓国のデモは、フランス革命に並ぶもの、と称えられ始めました。

 中央日報の李夏慶(イ・ハギョン)論説主幹が書いた「『ろうそく市民』はアンシャン・レジームの解体を求める」(11月22日、韓国語版)に以下のくだりがあります。

  • アンシャン・レジーム(旧体制)を解体した18世紀の2つの市民革命、米国の独立革命とフランス大革命が抑えることのできなかったエネルギーが200余年の後に、大韓民国の広場で生まれた市民の「ろうそく革命」として蘇ったのだ。

世界3大革命の1つになったのですね。

鈴置:英国の名誉革命に例える向きもありますので「世界4大革命の1つ」と言った方が正確かもしれません。先ほど引用した中央日報の社説では以下のように称賛しています。

  • 英国の名誉革命と米国革命で新たな政治体制が作られ、フランス革命で自然法と人権が普遍的価値として受容されたとするならば、いま韓国のろうそく革命はこの地に真の市民社会が到来したことを告げる祝砲といえるだろう。

大統領だけが悪いのか

なるほど、少なめに出る警察発表の数字を使うと怒られる理由が分かりました。

鈴置前回に引用した朝鮮日報の「すべてが大統領だけのせいなのだ」(11月25日、韓国語版)。こうした「デモを称賛するムード」に対し、結果的に警鐘を鳴らす記事となっています。

 これを書いた朴正薫(パク・ジョンフン)論説委員の主張は「大統領だけが悪者ではない。問題の根は韓国のシステムにある」です。もちろん見出しの「すべて大統領のせい」は強烈な反語です。記事の冒頭の要約部分を訳します。

  • そもそも大統領1人の問題なのか。
  • 崔氏の国政壟断を幇助し、沈黙したシステムの後進性がもっと問題だ。

 記事の結論部分は以下です。

  • 大統領1人を引きずり降ろせば済む問題ではない。国政システムを預かる統治エリートらの後進性を葬らなければ、絶対に変わらない。
  • 公職者、官僚、政治家、教育者、言論人、企業人の「古朝鮮」意識を根こそぎにせねばならない。

 こうした視点からすれば「デモ称賛」は危ういものを含んでいます。「大統領だけが悪い」と叫ぶデモは「その他の人々」を免罪し、韓国の抱える構造的問題にはメスを入れようとしないからです。