北朝鮮側に立つ韓国

でもその際、韓国は米国ではなく北朝鮮側に立つことになります。韓国がそんな道を選ぶのでしょうか。

鈴置:十分にあり得ます。というか、左派の文在寅政権はその方向に進んでいるのです(「文在寅大統領の『反米・親北』の言動」参照)。

●文在寅大統領の「反米・親北」の言動(2017年)
4月13日 大統領選挙の討論会で「(米国が先制攻撃を準備する場合)北朝鮮にホットラインを通じて直ちに連絡し、挑発を中断するよう要請する」と発言
5月10日以降 「手続きが不透明」としてTHAADの追加配備を認めず。6回目の核実験(9月3日)後の9月5日になって配備容認を決定
8月15日 「朝鮮半島での軍事行動は大韓民国の同意なくして誰もできない」と米国の先制攻撃に反対
9月21日 「時期は未定」としつつ、800万ドルの対北人道支援を発表
9月28日 「戦時作戦統制権を早期に米国から韓国に移す」と国軍の日の記念式典で演説
11月29日 北朝鮮のICBM発射直後に「米国が先制攻撃を念頭に置く状況にならぬよう防がねばならない」と発言、米国を牽制

 だからこそ韓国の保守は、金正恩と文在寅の連携プレーに見える動きに神経を尖らすのです。朝鮮日報は冒頭に引いた社説で、以下のように指摘しました。要約しながら引用します。

  • 北朝鮮が「世界の平和を守るため、あらゆる努力を傾ける」と言い出した。核保有国になったうえ、対話局面への転換に乗り出すとの予告だ。
  • トランプ大統領の考えが変われば局面は大きく変わる。北朝鮮が核実験やICBM発射を中断するとの条件に対し、制裁解除や在韓米軍の撤収が持ち出されるだろう。
  • 金正恩委員長の「核を持ったうえでの平和攻勢」は韓国の左派勢力と連携し、深刻な国内分裂をもたらすかもしれない。

 文在寅大統領の「米国の先制攻撃を防げ」との発言を北朝鮮の「平和攻勢」に応じる伏線と見なしたうえで、「平和攻勢」を左派政権が支持したら国論が分裂し収拾がつかなくなると警告したのです。さらに朝鮮日報は米韓同盟も解体されると訴えました。

  • 北が目標とする「決定的時期」はますます近づいている。たぶん何カ月も残っていないだろう。最も重要なことは、最悪の状況下でも揺れない韓米同盟を再確認することだ。米国が保障する核の傘のほか戦術核再配置や核共有戦略も真剣に検討しなければならない。

死に物狂いの親米保守派

「決定的時期」とは?

鈴置:緊張の激化や北の平和攻勢により、韓国が米国との同盟をとるか、同族との連帯をとるか、立場を迫られる時との意味です。

 もちろん保守系紙として朝鮮日報は同盟が大事だ、と主張したのです。先に引用した中央日報の社説も、同じ結論を掲げました。翻訳します。

  • 今や韓米同盟を基盤に北朝鮮をさらに強く圧迫せねばならない。どんな困難があろうと、自由民主主義の大韓民国を守る覚悟が必要な時だ。

保守は必死ですね。

鈴置:朝鮮日報は翌12月1日の社説「文大統領、習主席に『対北原油中断』を直接要求せよ」(韓国語版)でも、文在寅政権の「同盟より民族」路線に歯止めをかけようとしました。

 見出しを読めば分かりますが、大統領は12月中旬に予定される中韓首脳会談で北朝鮮への原油輸出を完全に止めてくれと中国に頼め、との主張です。

 原油の輸出中断は米国が何度も要求し拒否されています。韓国の頼みを中国が受け入れるわけがない。朝鮮日報もそれは分かっている。ただ、そうしたパフォーマンスをすることで「米国側に残る」姿勢を世界に示せ、と親北政権に要求したのです。