北朝鮮<ジンバブエ=韓国

ジンバブエ軍は独裁者を倒せたのですね。

鈴置:韓国の保守はそこに注目しました。「未来志向」というペンネームの識者が趙甲済ドットコムに「アフリカの軍人よりもダメな北朝鮮軍」(11月17日、韓国語)を寄稿しました。ポイントを訳します。

  • ジンバブエの軍人は勇気を出した。北朝鮮の多くの軍人の中で長期政権と独裁に対し立ち上がる軍人は1人もいないのか。彼らの奴隷根性には語る言葉もない。本当に金正恩を尊敬してじっと服従しているのか。

 北朝鮮の軍人に、決起を呼び掛けたのです。

韓国紙はこうした視点で書きませんね。保守系紙を含めて。

鈴置:それは当然です。ムガベ政権を倒したのは軍だけではありません。退陣を要求するデモと、議会の弾劾手続きも貢献しました。

デモと弾劾……。北東アジアのどこかの国と似ていますね。

鈴置:そこです。韓国の大手メディアは朴槿恵(パク・クネ)退陣を実現したデモを称賛し「世界に誇る快挙」と自画自賛していました(「『名誉革命』と韓国紙は自賛するのだが」参照)。

 東亜日報は「日本人は羨ましがっている」、朝鮮日報は「外国メディアも感嘆」と書きました。韓国では朴槿恵弾劾騒動が「英国の名誉革命の再現」「フランス革命などと並ぶ世界4大革命」ということになっている。

 というのに「なんだ、我が国はジンバブエと同じ水準だったのか」と読者に思わせる記事は載せられません。韓国人はアフリカを露骨に下に見ますしね。

 韓国の弾劾騒動を「衆愚政治の極み」と批判していた趙甲済ドットコムくらいでないと、ジンバブエで起きた「韓国に続く名誉革命」を報じにくいわけです。

クーデターは訪中直後

なるほど。「ジンバブエの軍人のように勇気を出せ」と揺さぶられたら、金正恩は「韓国はジンバブエと同じじゃないか」と言い返せばいいわけだ。

鈴置:「韓国はジンバブエだ」なんて言っている余裕は金正恩政権にはないでしょう。ムガベ退陣の後ろには中国がいたとの見方が広がっているからです。

 CNN・日本語版が「ジンバブエの『クーデター』、中国関与か 軍幹部が直前に訪中」(11月20日)で報じています。引用します。

  • チウェンガ司令官が中国から帰国した数日後、ジンバブエの首都ハラレで同司令官率いるジンバブエ軍が政変を起こして実権を握り、ムガベ大統領を自宅軟禁状態に置いた。
  • この経緯からチウェンガ司令官の中国訪問に注目が集まり、同司令官がムガベ大統領に対する行動について中国政府による暗黙の了解を求めたのではないかという臆測が浮上している。

 要は、中国がムガベ大統領を見限った、ということです。中国はジンバブエに多くの経済的な利権を持ちます。そんな国が政情不安に陥ったら困るのです。

 ひょっとすると中国は、こうした情報をリークし「ムガベになりたいか」と金正恩委員長を脅したのかもしれません。中国の安全保障にとって、北朝鮮の安定はジンバブエのそれとは比べものにならないほど重要ですから。

次回に続く)

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

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