全6863文字
ソウルの日本大使館前で2012年8月15日に開かれた慰安婦問題デモに参加した民主統合党時代の文在寅氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

前回から読む)

 韓国の保守系紙が「日本と対決せよ」と文在寅(ムン・ジェイン)大統領に迫った。

大統領に「自分でやれ」

鈴置:11月7日の朝鮮日報が興味深い論説を載せました。「文政権、非難ばかりせず自分でやってみろ」です。書いたのは東京特派員や論説委員を歴任した鮮于鉦(ソヌ・ジョン)社会部長。

 日本語版にも「文在寅政権、非難ばかりしないで自分でやってみろ」という見出しで掲載されたので、読んだ人も多いと思います。鮮于鉦・部長は慰安婦合意から書き起しました。要約します。

  • 2015年に韓日政府が慰安婦で合意した時、当時は野党代表だった文在寅氏は「10億円で我々の魂を売った」と激しく非難した。大統領に就任後はこの合意を「問題だらけ」と認定し、合意に基づいて設立した財団の解散も決めた。
  • ところが日本に対しては「合意を破棄したり、再交渉を要求しない」と言った。「破棄」を宣言しつつ再交渉しなければ、違憲状態となり、日本と交渉せざるを得なくなるからだろう。

「破棄する」とはなぜか言わず

なるほど、慰安婦合意を踏みにじりながらも「破棄する」と言ってこないのは、そういうことだったのですね。

鈴置:盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は官民で委員会を作り「1965年の日韓請求権協定では元・慰安婦への賠償は解決していない」と宣言しました。2005年8月のことです。

 元・慰安婦を支援する左派にいい顔をしたのです。しかし日本との賠償交渉には乗り出さなかったので、元・慰安婦らによって憲法裁判所に訴えられてしまいました。

 憲法裁は日本との賠償交渉に動かない韓国政府を「不作為の作為」と断罪しました。ただ、盧武鉉政権は逃げ切りました。判決が下りたのは、次の李明博(イ・ミョンバク)政権の2011年だったからです。

 この判決に背を押され、李明博、朴槿恵(パク・クネ)の両政権は日本に対し元・慰安婦への補償を迫らざるを得なくなりました。日韓関係が修復不能になるほど悪化したのは、この憲法裁判決がきっかけです。

 2015年末に安倍晋三政権と朴槿恵政権は米国の仲介で慰安婦合意を結び、この問題をなんとか収めました。しかし文在寅政権が誕生すると……。