日韓和解は米国が演出

そのロジックに保守からの賛同は集まったのですか。

鈴置:ある程度は。ただ、保守派といっても屈辱の歴史を消し去りたいと考える人もいます。あるいは朴正煕政権の独裁を否定的に見る人もいます。そんな人は「建国する心情」の方に共感するかもしれません。

日韓対立に見えるけれど結局、韓国内部の対立なのですね。

鈴置:その側面が強い。ただ、それを「歴史認識問題」と軽く見てはなりません。北朝鮮にどう向き合うかを決める「現在の問題」なのです。「反日」の底流に「反米」が流れていることにも注目すべきです。

 そもそも日韓国交正常化は冷戦を闘う米国の指導で実現しました。米国には、北朝鮮と直接対峙する韓国を経済的にテコ入れする必要があった。

 慰安婦合意も同じ構図です。核武装を進める北朝鮮に対し結束を固めるために、米国が強引に日韓に手打ちさせた。

 北朝鮮との融和を第1目標に掲げる文在寅政権の目には、日韓国交正常化も慰安婦合意も、米国が仕掛けた「民族内部の対立を煽る道具」に映ります。

 ただ「NO」とは言いつつも、今すぐに慰安婦合意や日韓請求権協定を破棄するつもりはない。そんなことをすれば「次は米韓同盟の破棄だ」と大騒ぎになる可能性があるからです。

 もちろん、米韓同盟はゆっくりとですが着実に、破棄の方向に進んでいます(『米韓同盟消滅』第1章「離婚する米韓」参照)。

 でも文在寅政権は今現在は、国民にそれを悟られたくはない。普通の人はまだ、同盟破棄への心の準備ができていないのです。

「リベラル」の仮面の下には……

そこで、鮮于鉦・部長は……。

鈴置:この記事で文在寅政権の仮面を剥ごうとしたと思われます。「元・慰安婦に寄りそう」姿勢を見せたり、権威主義的だった朴槿恵政権の打倒運動の先頭に立ったり、リベラルを前面に打ち出す文在寅氏。

 だが実際は日韓関係を壊し、韓米同盟の破壊まで目論む過激な民族主義者だと知らしめたいのではないかと思います。

 だから「自分でやってみろ」と、大統領に対しては普通使わない言葉までを使って挑発した。「言うだけ番長」に行動させれば――日韓関係を破壊させれば、さすがに普通の韓国人も文在寅の正体に気付くだろうからです。

次回に続く)

【著者最新刊】『米韓同盟消滅』

米朝首脳会談だけでなく、南北朝鮮の首脳が会談を重ねるなど、東アジア情勢は現在、大きく動きつつある。著者はこうした動きの本質を、「米韓同盟が破棄され、朝鮮半島全体が中立化することによって実質的に中国の属国へと『回帰』していく過程」と読み解く。韓国が中国の属国へと回帰すれば、日本は日清戦争以前の「大陸と直接対峙する」国際環境に身を置くことになる。朝鮮半島情勢「先読みのプロ」が描き出す冷徹な現実。

第1章 離婚する米韓
第2章 「外交自爆」は朴槿恵政権から始まった
第3章 中二病にかかった韓国人
第4章 「妄想外交」は止まらない

2018年10月17日発売 新潮社刊