悪い王は誅すべきだ

デモは左派の陰謀ですか?

鈴置:いいえ、国民の不満が噴出したものです。でも、左派が「平和なデモ」を十二分に活用しているのも明らかです。

 中央日報の「曺国(チョ・グッ)教授『憲政回復のために名誉革命を本格的に始めよう』とツイート」(11月12日、韓国語版)から引用します。

  • ソウル大学法科大学院の曺国教授は12日の民衆総決起を1688年に英国で起きた名誉革命になぞらえてきた。
  • 曺国教授はSBSとのインタビューで「血を流さない方法で、現在の憲政紊乱の状況を終わらせ、憲政を回復せねばならない」と朴槿恵大統領の下野を求めた。

デモこそが朴大統領を退陣に追い込む道だと言うのですね。

鈴置:韓国では、指導者――王様や大統領が道を誤った場合、家臣や国民は実力で取り除くべきだと考えられています。

 曺国教授は左派系紙、ハンギョレへの寄稿「今や『名誉革命』の時だ」(11月7日、韓国語版)でも以下のように書きました。

  • 主権者である国民は1987年6月の民主化闘争で民主的な憲法を作り、民主化が始まった。約30年たった今、国民の手で民主憲政を回復せねばならない状況になった。国の根本を再び立て直す「反正」の道を行かねばならない。今や「名誉革命」の時だ。

 韓国語で「反正」(パンジョン)とは「悪い王を廃し、新しい王を立てる」との意味です。朝鮮朝でクーデターに成功した側が使った言葉でもあります。

デモを無視できない検察

「悪い王」とは?

鈴置:「法律を犯した王」という意味ではありません。ある家臣の価値基準から見て間違った行動をとった王、あるいはある家臣にとって自分と対立する勢力に担がれている王、ということに過ぎません。

 米国で学位も取得した法学者である曺国教授が、この単語を使うとは「反正」の伝統がいかに韓国社会に根付いているか、思い知らされます。

 ただ、いくら「反正」としてもデモが流血に至ると、権力に弾圧の名分を与えてします。そこで「無血」なり「名誉革命」が称賛されるのです。 

 今、大統領の40年来の友人である崔順実(チェ・スンシル)氏への捜査が進んでいます。大統領の権力を笠に着て、政府の予算や人事を壟断して金もうけしたとの疑いです。

 検察は11月14日からの週に朴大統領を調査する可能性が高い。12日の大規模デモにより、検察は「大統領は無関係だった」などとは発表しにくくなりました。国民が声をこれほどに高めた以上、検察も無視できないからです。

 大統領のスキャンダルをテコに、保守勢力の打倒を図る左派の狙い通りになっていく、と趙甲済氏は危機感を深めています。

 そこで「デモに押されて下野してはいけない」と大統領に訴え始めました。掲げた論理は「憲政を踏みにじることになる」です。先の記事で、趙甲済氏は以下のように書きました。