外交と国防にしがみつく朴槿恵

そう言えば、保守運動の指導者である趙甲済(チョ・カプチェ)氏が「朴槿恵大統領が下野するか、あるいは戒厳令でデモを抑え込むか、との状況になりかねない」と指摘しました(「朴槿恵の下野か、戒厳令か」参照)。

鈴置:2回目のデモの最中、趙甲済氏の主宰するネットメディアに「戒厳令」を準備すべきだと主張する記事が載りました。書いたのは「ヴァンダービルド」の筆名で縦横に論じる外交・安保の専門家です。

 「刀を振りかざす相手には、同じように真剣で対さねばいけない」(11月5日、韓国語)の一部を翻訳します。

  • 朴槿恵大統領は今後、総理に強い権限を持たせて内政を任せる一方、自分は外交と国防を担うとの構想を持っているようだ。だが、そうなれば左派は「崔順実騒動」を煽った甲斐がない。
  • 韓米日の協調強化、北朝鮮の金氏体制崩壊への動き、北朝鮮への先制攻撃、韓日の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)、文在寅氏の北朝鮮とのつながりの追及など(左派にとって)危険な政策を無力化しようと狙ったのに、朴大統領が安保・外交を引き続き担うとすれば失望するしかない。
  • 一方、朴大統領は「崔順実事件」が完全に究明されていないというのに、白旗を掲げて投稿するように一方的に譲歩している。側近を処理し、核心ポストに野党系の人を指名した。捜査にも応じるとした。国民にも謝った。卑屈に見えるほどの譲歩だ。

下野闘争には戒厳令

ヴァンダービルド氏にすれば「卑屈な譲歩」なのですね。

鈴置:当初、韓国には「上手に立ち回れば、首相の交代ぐらいで事態を収拾できる」と見た人も多かったのです。韓国では譲歩すれば「弱い」と見なされ、さらなる譲歩を迫られます。

 ここまで下手を打ち続けて国民の怒りを買うと、政権としては打つ手がありません。大統領をかばうメディアもありません。左派系紙はもちろん、保守系紙も一様に大統領批判を強めています。

 少しでもかばえば、国民から「御用メディア」と批判されるからです。さて、ヴァンダービルド氏の記事の続きに戻ります。

  • これだけ大統領が譲歩したというのに、今後も「下野(げや)闘争」が続くというならば、ある種の不純な意図――国防や外交の権限まで掌握した後に「左旋回」しようとの意図が鎧の下にあると見るほかはない。
  • もし、この目的のために今後も騒乱と混乱が続くなら、朴大統領は憲法で保障された緊急措置権の発動を準備すべきだ。国会の承認など面倒な手続きを考えると、緊急措置権の中で「警備戒厳令」が最も現実的な選択肢だ。

戒厳令ですか。

鈴置:準備しておけ、との主張ですがね。ちなみに「警備戒厳令」とは敵との交戦状態にない場合に発動する「戒厳令」です。軍が公共の安寧秩序を維持するという点では、交戦状態下の「非常戒厳令」と同じです。

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