米韓声明は3日で反故に

 「日米韓の3カ国軍事協力」に関する部分も、ちゃんと米韓共同声明には入っています。以下をご覧下さい。

  • 両長官は、韓米日3カ国がアジア太平洋地域での共同の安全保障の課題に直面していることに共感しつつ、ICBM(大陸間弾道弾)とSLBM(潜水艦発射弾道弾)を含む北朝鮮の核・弾道ミサイルの開発が3カ国の安全保障と繁栄への脅威となることを明らかにした。
  • 両長官は、アジア太平洋地域の平和と安定に寄与するために、3国間の安全保障協力を促進させていくことにした。

 「太平洋地域での共同の安全保障の課題」とは中国の不法な海洋進出を指します。共同声明ではそれを抑止するための3国軍事協力、つまりは「中国包囲網」をきちんと謳っているのです。

 だから中国がその象徴たる3カ国同盟を嫌がるわけで、今回の中韓合意により、米韓声明の「包囲網」部分も反故にさせたのです。

 韓国の「日米韓の軍事協力を同盟に格上げしない」との表明は「包囲網に加わらない」と約束したと同じことですからね。

米中間のボール

たった3日前に結んだ米国との約束を、韓国はいとも簡単に破ったのですね。

鈴置:韓国はいまや、米中間のボールです。誰かに蹴られると、蹴られた方向に飛んで行く。逆から蹴り返されると反対側に行く。

 それは中国もよく分かっていますから、外交部の報道官も会見でわざわざ「約束を破るなよ」と脅したのです。

 10月30日の会見に続き、10月31日の会見でも華春瑩報道官は「3NOを守れ」と言っています。英語版ではいずれも「faithfully follow」(誠実に遵守せよ)と訳されています。

合意文を発表した後も「守れよ」とは……。

鈴置:韓国は食い逃げの達人ですから。ことに11月7日からトランプ(Donald Trump)大統領が訪韓します。剛腕の大統領に中韓合意をひっくり返されないか、中国は相当に警戒しているはずです。

 だから通貨スワップも口約束のままにして、韓国が裏切ったら発動しないぞと圧力をかけているのでしょう(「米国はいつ『韓国放棄カード』を切るのか」参照)。

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