中韓の掛け合い漫才

 早速と言うべきか同日午後、中国外交部の会見で、康京和長官の「3NO」――中国政府は「3不」と表現していますが――に関し質問が出ました。

 人民網・日本語版「外交部、THAAD問題で韓国側に約束実行を望む」(10月31日)によると、華春瑩報道官はこう答えました。

  • 中国側はこの3点の発言を重視している。中国側は米国によるTHAADの韓国配備に一貫して反対している。韓国側が上述の約束を具体的に実行し、問題を適切に処理して、中韓関係が平穏で健全な発展の道に早期に戻る後押しをすることを望む。

 中国は時を置かず「約束は守れよ」と念を押したのです。なお韓国紙によると、中国の会見でこの質問をしたのは中国メディアの記者でした。中国政府の意向に沿ったものでしょう。

 中韓は、それぞれの外交部を舞台にしたヤラセ問答により「3NO」合意を確認しました。そしてこの「掛け合い漫才」を担保に翌日、両国は合意文を発表したのです。

なぜ、合意文に「3NO」を書き込まず、そんな回りくどい芝居を打ったのですか。

鈴置:「3NO」は米国との前々からの合意を踏みにじるものだからです。中国は米韓同盟を揺さぶるため「3NO」を合意文に入れさせようとした。しかし韓国が抵抗したので「答弁方式」を採ったのでしょう。

ソウル守るTHAADにNO!

「答弁方式」だろうが「掛け合い漫才」だろうが、韓国が「3NO」を受け入れた事実に変わりはないと思いますが。

鈴置:韓国は「抵抗した」証拠を残したかったと思われます。なにせ直前にも米国と、この3点を確認し合っていたのですから。

 マティス(James Mattis)と宋永武(ソン・ヨンム)の両国防長官は10月28日、ソウルで米韓定例安保協議(SCM)を開きました。

 その後に発表された共同声明で「3点」に関し、改めて「YES」を確認しています。英語版の「Joint Communique of the 49th ROK-U.S. Security Consultative Meeting」でも、韓国語版の「第49回 韓米安保協議会議(SCM)共同声明全文」でも同様です。第5項に以下の文章があります。

  • 増大する北朝鮮の核、大量破壊兵器、弾道ミサイルの脅威に対応し、両長官は同盟の抑制方法と能力を向上させ、持続的な情報の共有と相互運用性を増進し、大韓民国に対する拡張抑止の信頼性、能力、持続性を保障することを約束した。

 「持続的な情報の共有と相互運用性を増進」とは「米国のMDへの参加」を意味します。韓国は偵察衛星を持ちません。米国の情報と防衛システムの相互運用なくしては、北のミサイルから自分を守れない。「MD参加」は必須なのです。

 現在、在韓米軍のTHAADは韓国の南部だけをカバーしています。首都・ソウルをより確実に守るには――米韓共同声明の「増大する北朝鮮の核、大量破壊兵器、弾道ミサイルの脅威に対応」するには、北部をカバーするTHAADの追加配備が必要です。

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