詫び状を差し出せ

大きな譲歩ですね。

鈴置:中国は韓国に猛烈な圧力をかけていた模様です。一部の韓国紙は合意文の発表前に「中韓首脳会談に応じてもらうため『THAAD配備は中国の利益を毀損した』との詫び状を差し出す可能性がある」とまで報じていました。

 これを報じたのは朝鮮日報。「韓中、THAAD葛藤の『出口戦略』を水面下で交渉」(10月26日、韓国語版)のポイントを訳します。

  • 中韓両国は関係正常化を目指し、THAADによる葛藤を縫合し得る共同声明ないし合意文の発表を進めていることが確認された。
  • 早ければ11月10日のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)など多者首脳会談の前後に発表できるよう、実務者の間で協議中だ。
  • 政府消息筋は「韓国は当初、韓中首脳会談を開き、その共同声明文を通じてTHAAD問題を解決したいと望んだ。しかし中国側が「THAAD(配備への許可)を撤回するか、少なくともTHAAD配備が中国の核心利益を侵害したことを認めてこそ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の訪中は認めることができる」と、首脳会談の実現の前提条件として合意文を要求していると語った。

 この記事により「中国に屈するのか」と韓国は大騒ぎになりました。10月27日には青瓦台(大統領府)が記事を全面否定しました。聯合ニュースの「THAAD巡る『中国への遺憾表明検討』報道 韓国大統領府が否定」(10月27日、日本語版)などで読めます。

 結局、韓国は「詫び状」を差し出すことは許してもらったものの、米韓同盟破棄の呼び水となる一札を取られてしまったのです。

口約束に留め、食い逃げ防止

「詫び状か」「同盟破棄か」の2択ですか……。

鈴置:そんな中で「スワップを延長してくれ」と哀願するのですから、韓国金融当局の立場は極めて弱かった。でも、中国はこの「大きな獲物」に満足し「正式なスワップ」を結んでやるのではないかと思います。

真田:私は鈴置説と比べ、もう少し韓国の運動空間は広いと見ています。前回に申し上げた通り、米ロがタッグを組む方向にあります。

 当然、中国は国際社会でのポジションの悪化を懸念せざるを得ません。スワップで貸しを作り、韓国カードを確保しようと考えても不思議ではないのです。

 ことに今、韓国は米国に寄り始めました。THAAD配備を認めたこともそうですし、米韓の共同軍事訓練にも力を入れている。高まる北朝鮮の脅威に対し、文在寅政権も知らん顔というわけにいかないのです。

 中国は米ロの関係改善と、韓国の米国への若干の回帰という新たな状況に対応し、スワップで韓国の取り込みを図った。人民元スワップとはいえ、通貨危機に怯える韓国にとっては安心材料です。

 ただ韓国はスワップを付けてもらったら調子に乗り、米国にさらに寄るかもしれない。そこで中国は、スワップは結ぶものの正式な締結ではなく「口約束」に留めたのだと思います。

鈴置:韓国は日本にスワップを付けてもらった瞬間、思い切り手のひらを返して卑日三昧しました。韓国は「食い逃げの達人」です(「5年前、韓国は通貨スワップを『食い逃げ』した」参照)。大甘の日本と比べ、脇の固い中国なら韓国に騙されないでしょう。