国連軍の名分で進駐

あの小説には真田先生と似た人も登場しました。さて、中国に派兵の名分はあるのですか?

真田:いくらでもできます。中国には200万人の朝鮮族が住んでいます。彼らも国籍は中国人。「北朝鮮で圧政に苦しむ中国の同胞を救いに行く」と大義名分を押し立てることもできるでしょう。「人民を解放するのが人民解放軍の本来の役割」なのですから。

 中国にとってベストシナリオは、金王朝への反乱が北朝鮮の人民によって発生し混乱に陥るケースです。それをTake Chanceし治安維持の名目で、上手くすれば人民解放軍が国連軍の帽子をかぶって進駐できるのです。その後は粛々と、暗殺された金正男の息子を「新しい王様」に押し立ててもいい。

鈴置:反乱は起きるでしょうか。北朝鮮軍の専門家である宮本悟・聖学院大学教授は『北朝鮮ではなぜ軍事クーデターが起きないのか?』という本を書いています。

真田:中国から援軍が来ると分かったら、話は別でしょう。「金王朝」の下では生きていけない、と考えている軍や党の幹部は必ずいます。彼らが金正恩暗殺に出る可能性が少なからずあります。

北朝鮮を南北に分割

米国はどう出るのでしょうか。

真田:中国の動きを容認するでしょう。金王朝が倒れれば、北の核武装という状況をとりあえずは食い止められる可能性が高いからです。中国にすべてを任せず、米中両軍がタッグを組んで南北から北朝鮮を挟み撃ちにする手もあるのです。

鈴置:米・ランド研究所(Rand Corporation)が2013年に『Preparing for the Possibility of a North Korean Collapse』という報告書を発表しています。

 タイトル通り「北朝鮮の崩壊への備え」を論じたもので、第9章は中国の介入に関し検討しています。簡単に言えば「北進した米韓軍と、南下した中国軍が北朝鮮を分割占領すべきだ」との結論です。275ページには地図が付いています。それを参考に作ったのが「地図1」です。

●地図1

 一番上の線は中朝国境から50キロ離れたライン。真ん中の線は首都・平壌(ピョンヤン)が米韓側に含まれるよう引いたものです。一番下は平壌と日本海側の大都市、元山(ウォンサン)のそれぞれ中心部をつないだ線です。平壌は南北に2分割されて統治されるわけです。

 ランド研究所は「金正恩後の北朝鮮」に関し、米・中・韓の利害を突き合わせ、どこで線を引くか交渉することになると見通しているのです。