プーチン大統領と習近平主席、それぞれの思惑は…(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

 再び大国の角逐の場となった朝鮮半島を、真田幸光・愛知淑徳大学教授と「金融」から読み解く(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)

「仕切り」始めたロシア

ロシアが朝鮮半島の「仕切り」に動いています。

鈴置:孤立した北朝鮮との関係を強化したうえ、韓国との間を取り持とうとしたり、米朝対話の場を設定したり……。

 ロシアは10月19日からモスクワで核不拡散会議を開き、北朝鮮外務省の崔善姫(チェ・ソンヒ)北米局長を招きました。米国からはシャーマン(Wendy Sherman)元国務次官らが参加しました。

 崔善姫局長は金正恩(キム・ジョンウン)委員長の側近と見られるため、この会議が米朝対話の糸口になるかと注目されました。ただ、交渉に向けた動きは確認されていません。

 外交関係者は「ロシアは北朝鮮との仲介役を担うことで国際社会での影響力拡大を狙う」と見ています。日経・電子版「ロシア外交、北朝鮮テコ 南北対話探り影響力演出」(10月17日)などが報じています。

真田 幸光(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部・研究科教授(研究科長)/1957年東京生まれ。慶応義塾大学法学部卒。81年、東京銀行入行。韓国・延世大学留学を経てソウル、香港に勤務。97年にドレスナー銀行、98年に愛知淑徳大学に移った。97年のアジア通貨危機当時はソウルと東京で活躍。2008年の韓国の通貨危機の際には、97年危機の経験と欧米金融界に豊富な人脈を生かし「米国のスワップだけでウォン売りは止まらない」といち早く見切った。

真田:ソ連、ロシアには北朝鮮は領土の一部との意識が根強い。日本の敗戦と同時にソ連軍の傘下にあった金日成(キム・イルソン)を送り込んで北朝鮮という国を作らせたのですから。

 というのにソ連崩壊後、後身のロシアは国力を落とし北朝鮮へのカネや食料を与える余裕を急速に失った。そこに中国が入り込んで、北朝鮮は中国が仕切る国と見なされるに至った。しかし、北朝鮮はロシアの前身たるソ連の勢力圏にあったのです。

6年間、訪中しない金正恩

なぜ、今になってロシアが朝鮮半島で蠢動し始めたのですか?

真田:中国が北朝鮮との関係を悪化させ、半島への影響力を減じたからです。平和的な方法で北朝鮮を説得し、核を放棄させる力が中国にあるとは少なくとも今は、誰も考えないでしょう。そこで満を持して「ロシアの出番」となったのです。

鈴置:金正恩政権以降、中朝関係は最悪です。父親の金正日(キム・ジョンイル)総書記も中国を信用していませんでしたが、訪中はしました。しかし金正恩委員長は2011年12月に権力を握って6年になりますが、中国へは一度も行っていません。

 金正恩委員長は、叔父の張成沢(チャン・ソンテク)が中国をバックに権力を握ろうとしたと考え粛清しました(「北も南も二股外交」参照)。

 異母兄の金正男(キム・ジョンナム)も、中国の力を使って自分にとって替わろうとしていると疑って暗殺したと見られます(「弾道弾と暗殺で一気に進む『北爆時計』の針」参照)。金正恩委員長にとって中国は敵なのです。

真田:中国にとっても北朝鮮を支配する「金ファミリー王朝」は困った存在になっています。朝鮮戦争の際は数十万とされる戦死者を出しながら北朝鮮を守った。

 今に至るまで経済的に支えてきましたが、北は中国の面子をつぶすことばかりします。9月3日の6回目の核実験も、中国が主催した新興5カ国(BRICS)首脳会議の初日の出来事でした。

 いざとなれば北朝鮮に兵を送り、自分の言うことを聞く政権を樹立するでしょう。近未来小説『朝鮮半島201Z年』でイメージされたシナリオにも似て。