金正恩は即座に死ぬ

「大事」つまり、先制攻撃を米国が本気で考えているからこそ、小手先の策は使わない、との指摘ですね。

鈴置:実際、北朝鮮の5回目の核実験(9月9日)の後、米国の外交・安保関係者は繰り返し先制攻撃に言及するようになりました。

 9月16日にはマレン(Mike Mullen)元・統合参謀本部議長が「北朝鮮が核で米国を攻撃できる能力を持ったら、先制攻撃も辞さない」と述べました(「朴槿恵は『北爆』を決意できるのか」参照)。

 9月23日にはホワイトハウスのアーネスト(Josh Earnest)報道官が質問に答える形で「一般論だが、先制的な軍事行動に関しては事前に論議しないものだ」と思わせぶりな発言をしました(「米国が北朝鮮を先制攻撃する日、韓国と日本は?」参照)。

 10月12日にはラッセル(Daniel Russel)国務次官補が「金正恩(キム・ジョンウン)が核攻撃を企て得る能力を持ったら、即座に死ぬことになる」と語りました。

 発言の原文はAP通信によると以下です。U.S. Newsの「US reserves right to punish China firms working with NKorea」で読めます。

  • Perhaps he's got an enhanced capacity to conduct a nuclear attack and then immediately die.

 その前日の10月11日にはシャーマン(Wendy Sherman)前国務次官がソウルで「北朝鮮の核兵器を完全に終わらせるためには経済制裁措置だけではなく、すべての可能なオプションを用いるべきだ」と語っています。

 聯合ニュースが「シャーマン前国務次官『北核問題解決に全オプション動員を』」(10月24日、日本語版)で報じました。シャーマン氏はヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)候補が大統領就任の際は、外交関係の要職に就くと見られています。

北朝鮮側は「核で先制攻撃」

「先制攻撃」の大合唱ですね。

鈴置:北朝鮮も負けていません。これまでも「米韓を先制核攻撃する」と威嚇してきました(「朴槿恵は『北爆』を決意できるのか」参照)。

 米国で「先制攻撃論」が盛り上がると、北朝鮮もガンガン言い返しています。労働新聞は10月5日、論評で「米国の核の脅威に対抗、我々は先制攻撃方式に転換した。核はいつでも米国に使える」と宣言しました。

 労働新聞は10月19日にも「先制攻撃は米国と南朝鮮の特権ではない。南全域は火の海、米本土も修羅場になる」との論評を載せました。

 米朝の間で「先制攻撃するぞ」との威嚇合戦が始まったのです(「『先制攻撃』を巡る動き」参照)。ただ、北朝鮮と異なって米国は「核による先制攻撃」とまでは言っていませんが。

「先制攻撃」を巡る動き(2016年)
9月
5日 北朝鮮、高速道路から3発の弾道ミサイル連射、1000キロ飛び日本のEEZに落下
9日 北朝鮮が5回目の核実験を実施し「戦略ミサイルの核弾頭の生産が可能になった」
10日 稲田朋美防衛相、韓民求国防相に電話会談で、GSOMIA締結を呼び掛ける
12日 韓国国防相報道官「日本とのGSOMIAは必要な雰囲気。ただ、国民の理解必要」
16日 マレン元米統合参謀本部議長「北の核の能力が米国を脅かすものなら先制攻撃し得る」
19日 カーター国防長官、在韓米軍のスローガン「fight tonight」を引用「その準備はできた」
20日 北朝鮮「推力重量80トンの静止衛星運搬用ロケットの新型エンジン燃焼試験に成功」
20日 ハイテン米戦略軍次期司令官「北朝鮮はいずれICBMを持つ。すぐに備えるべきだ」
22日 米大統領報道官、対北攻撃を聞かれ「一般に先制的軍事行動に関し事前に論議しない」
24日 ヴィクター・チャ教授、中央日報に「北朝鮮のICBMの破壊も検討」と寄稿
26日 米韓海軍、日本海で合同訓練。韓国軍「北朝鮮の核・ミサイル施設や平壌が攻撃目標」
10月
1日 米韓海兵隊、白翎島で合同軍事演習
5日 労働新聞「米国の核の脅威に対抗、我々は先制攻撃方式に転換。核はいつでも米国に使える」
6日 国連軍縮委員会で北朝鮮代表「自主権が侵害されない限り先に核は使わない」(朝鮮通信、8日報道)
10日 北朝鮮、労働党創建71周年記念式典を開催
10日 米韓海軍、黄海含む朝鮮半島周辺海域で「陸上精密打撃訓練」(10月15日まで)
11日 シャーマン前米国務次官「北の核には経済制裁に加え全ての選択肢を使うべきだ」
11日 朝鮮中央通信「来年1月の金正恩委員長の誕生日は盛大に祝う」
12日 ラッセル米国務次官補、記者団に「金正恩が核攻撃する能力を持てば直ちに死ぬ」
15日 北朝鮮、中距離弾道弾を平安北道・亀城から発射。米軍は「直後に爆発」と発表
19日 労働新聞「先制攻撃は米国と南朝鮮の特権ではない。南全域は火の海、米本土も修羅場になる」
20日 北朝鮮、亀城から長距離弾道ミサイル発射。米韓は「直後に失敗」と発表
21日、22日 北朝鮮の韓成烈外務次官と米国のガルーチ元国務次官補らがクアラルンプールで接触