韓国メディアも首傾げる

確かに変ですね。

鈴置:「米国が先に発表したのは、米軍がSM3で落としたからではないか」「発表が半日以上も経ってからだったのは、発表するかどうかを米上層部が協議していたからではないのか」と疑うコリア・ウォッチャーもいました。

 聯合ニュースもこの遅れに首を傾げる記事を配信しました。「『米国の情報をすべて見てから』…軍、北のミサイル発射を1日遅れて公開し論議の的に」(10月16日、韓国語版)です。ポイントを訳します。

  • 韓国の合同参謀本部関係者は「韓米が情報を共有し分析するのに時間が必要だった」としたうえで「失敗に終わったため、一刻を争って公表する状況ではなかった」と述べた。
  • しかし、合同参謀本部は従来、ミサイルの種類の判別の可否や実験の成否にかかわらず、直ちに公表してきた。この説明はやや受け入れがたいところがある。

 聯合ニュースはこの記事の結論部分で「韓米の情報共有がしっくりいっていないのではないか」と指摘しただけで「米国が落としたのではないか」とまでは書きませんでしたが。

北を叩くなら一気に

では、実際にはどうだったのでしょうか。

鈴置:この問題に詳しい日本の専門家は、以下のように語りました。

  • 米海軍が撃ち落としたのではなく、本当に失敗したのだろう。北朝鮮は10月15日以前に6回、ムスダンを撃って5回失敗している。韓国軍の発表が遅れたのは自力で探知できなかったためと思う。
  • 今回の発射場所は中朝国境に近い黄海側の平安北道・亀城(クソン)。韓国からかなり離れた場所だ(地図参照)。しかも北朝鮮はトレーラー――移動式のミサイル発射台から撃ったので、発射場所を予め特定できなかっただろう。
  • こうした状況下で、偵察衛星を持たない韓国が弾道ミサイル、ことに発射直後に爆発したミサイルを探知するのはまず無理だ。

なるほど「米軍犯人説」はガセだったのですね。

鈴置:でも、この専門家は不気味な話もしました。以下です。

  • ムスダンの試射などは「大事の前の小事」。米軍は真剣に先制攻撃を検討している。そんな時に、ミサイル1発だけを狙いはしない。

 米軍が北朝鮮を叩く時は、一気に叩く――というわけです。確かに北に警告を発するために、テストで発射された北の弾道ミサイルだけを攻撃する手もあります。

 しかしこの専門家は、米軍はそんな中途半端なやり方はしない。ミサイルを撃ち落とせば北が反撃して来る可能性が大。どうせやるなら核・ミサイル施設すべてを同時に破壊する、と言うのです。