物理的にも「消える」

「地図から消える」は韓国人にとって単なる例え話ではないのですね。

鈴置:9月9日の北朝鮮の5回目の核実験の後「地図から消える」との悲鳴はより高くなりました。同じ「消える」でも、核攻撃によって物理的に「消える」ことも含むようになったのです。

 核実験の翌日に保守運動の指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏が自身が主宰するネットメディアに書いた「大韓民国は地図上から消え、賢い韓国人は絶滅した」(9月10日、韓国語)は悲痛です。要点を訳します。

  • 100年後、歴史の本はこう記録するかもしれない。
  • 大韓民国は北朝鮮の核攻撃を受け、地図上から消え去った。韓国人は「金正恩(キム・ジョンウン)がまさか(核ミサイルを)撃つはずがない」「米国が黙っているだろうか」と無責任な姿勢で一貫し、核に備えた防空壕も掘らず、核ミサイルへの防衛網も造らなかったため絶滅した。

     もちろん見出しの「賢い韓国人」は強烈な反語です。希望的観測にしがみ付き、北の核への対応を怠る韓国人への警告です。

     なお、日本人が韓国の今の苦境を対岸の火事と見れば「賢い日本人」となるでしょう。北朝鮮の核ミサイルの脅威に晒されるという点で、日本の置かれた状況は韓国と本質的に同じなのです。

     しかし多くの日本人も「まさか北朝鮮が日本に核ミサイルを撃つだろうか」「米国が何とかするだろう」と考えています。

    200年間で66カ国が消滅

    「賢い日本人」ですか……。

    鈴置:話を韓国に戻すと、保守派の国際政治学者、李春根(イ・チュングン)博士も、5回目の核実験の翌9月10日に「韓国が地図から消える」と警告しました。

     東亜日報のホ・ムンミョン論説委員に語りました。この記者も、韓国の安全が危機的な状況にあると必死で訴える保守の論客です。

     インタビュー記事「中国をも見下す金正恩…韓国は核武装しか答えがない」(9月12日、韓国語版)から引用します。

     読者に強く訴えたかったのでしょう、ホ・ムンミョン論説委員は「国が消える」との李春根博士の発言を記事の結論部分で紹介しています。その小見出しは「200年間に66カ国が消えた」です。

    • ナポレオン戦争が終わった1816年から2000年までに207カ国が存在したが、約3分の1に当たる66カ国がなくなった。
    • この中で50カ国が隣の国の武力攻撃で滅びた。国際社会で生きて行くということはこのように危険なことなのだ。どの国もが安全保障、すなわち生存を国家第1の目標に置くのもそのためだ。
    • 小さくて弱い国は猛獣の攻撃を避けるため、ハリネズミのように「針」を持たねばならない。
    • 北朝鮮は遅かれ早かれ核兵器のシステムを完全に備える。その時、韓国の運命は風前の灯となる。
    • それを避け得る「究極的な方法」が「核武装」であるという事実は、過去70年間にわたって核戦略理論家が合意した最終的な結論だ。

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