中国から逃げ出す工場

 注目すべきは米国の対中関税が、極めて注意深く準備されたものであることです。一部の人が見るように「トランプの思い付き」ではないのです。

 適用範囲、税率、その拡大のプロセスを上手に設定することで米国の被害は最小化する一方、時間の経過と共に中国から工場を引き剥がすよう設計されています。

 ことに重要なのは、米国の本気度を世界が見抜いたことです。例えばFTの「対中冷戦へと進む米国」(10月4日、日本語)は以下のように指摘しました。

  • 今回のあまり賢明とはいえない追加関税は、ホワイトハウス内だけで拙速に決めた政治判断ではない。今回の措置は、もっと危険で永続的なものを表している。
  • 米国と中国の経済的、政治的関係は完全にリセットされ、これからは貿易戦争というより冷戦に近い状態が始まる。

 こうした「米中の葛藤が長期化する」との見方こそが、企業の中国離れをどんどん加速します。日経は企業の中国脱出劇を報じた「台湾EMSの新金宝、米中摩擦で脱『中国生産』」(9月20日)、「米中貿易戦争、日本企業も対策 生産・調達見直しへ」(9月22日)などを相次ぎ載せています。

ところで前回の最後のところで「南北が手を組んで民族の核に動く」話を今回に話すとのことでしたが。

鈴置:「米中冷戦」の方が緊急性が高いと判断し「民族の核」は先送りしました。

では、その話はいずれ落ち着いた時に。

(次回に続く)

【著者最新刊】『米韓同盟消滅』

米朝首脳会談だけでなく、南北朝鮮の首脳が会談を重ねるなど、東アジア情勢は現在、大きく動きつつある。著者はこうした動きの本質を、「米韓同盟が破棄され、朝鮮半島全体が中立化することによって実質的に中国の属国へと『回帰』していく過程」と読み解く。韓国が中国の属国へと回帰すれば、日本は日清戦争以前の「大陸と直接対峙する」国際環境に身を置くことになる。朝鮮半島情勢「先読みのプロ」が描き出す冷徹な現実。


第1章 離婚する米韓
第2章 「外交自爆」は朴槿恵政権から始まった
第3章 中二病にかかった韓国人
第4章 「妄想外交」は止まらない

2018年10月17日発売予定 新潮社刊

■訂正履歴
本文中、「市場開放水準にどれだけ近付けるか」は「市場開放の水準をどれだけ上積みできるか」の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2018/10/11 18:30]