北の抑制を中国に頼む

 韓国のもう1つの選択は中国による核抑止だ。米国の核による抑止が効かないなら、北朝鮮経済の生殺与奪の権を握る中国に頼もう、との発想だ。

 朴槿恵大統領は2015年9月4日、中国から帰国する飛行機の中で「中国と協力し統一を目指す」と語った(「統一は中国とスクラム組んで」参照)。

 9月2日に習近平主席と会談し、3日に天安門から軍事パレードを参観した直後の出来事だ。韓国の保守は「米韓同盟を破棄してでも統一に動くつもりか」とパニックに陥った。

 中国が韓国主導の統一に協力、つまり北朝鮮を捨てる以上、代わりに米韓同盟の破棄を要求するというのが常識だからだ。

 大統領の真意は不明だ。が、将来の統一問題で「スクラムを組む」ほどに中国を頼みとするのなら当然、差し迫った核問題で中国を頼みにするだろう。もちろんその時、中国は米韓同盟の破棄、あるいは事実上の無効化を韓国にのませるに違いない。

 2014年4月23日、朴槿恵大統領は突然、中国の習近平国家主席に電話し「北朝鮮のさらなる核実験は域内の軍備競争と核ドミノを引き起こす。(核実験を実施しないよう)北朝鮮に対する説得を一段と努力して欲しい」と要請した(韓国の通信社、ニュース1による)。

 北朝鮮の核武装阻止をも話し合う、米韓首脳会談の開催を2日後に控えての“事件”だった。朴槿恵政権がもはや同盟国の米国だけを頼みにするわけにはいかない、と考えている明確な証拠である。

4割弱が親中派

 韓国には3番目の選択肢もある。「現状維持」である。これは北の核への抑止を、現在の同盟国である米国に全面的に依存することを意味する。

 もっとも、米国と「完全なスクラム」を組むためにはTHAAD配備を容認したうえ、米主導のMDにも参加する必要がある。

 韓国の保守派の一部は、戦術核兵器の韓国への再配置を米国に要求しようと言い出すだろう。自前の核武装よりも手っ取り早く、かつ米国との摩擦も少ないからだ。

 だが、すっかり中国に取り込まれた朴槿恵政権が、中国が嫌がるそんな選択をとる可能性は低い(「『中国の尻馬』にしがみつく韓国」参照)。

 政権だけではない。4割近い韓国人が「落ち目の米国」ではなく「浮上する中国」とともに生きる決意を固めている。

 韓国の世論調査会社、リアルメーターの2015年7月29日の調査によると、「米中どちらが重要か」との問いに対し、韓国人の50.6%が米国と答え、37.9%が中国と答えている(「どうせ、中国の属国だったのだから」参照)。

韓国の動揺を待つ中国

 今現在は「北の核」への恐怖が韓国を支配している。しかし「米国を頼り続けるか」あるいは「中国を新たなパートナーに選ぶか」で、論争が起こる可能性が高い。

 いくら米国が頼りないからといって、傲慢な独裁国家に身を寄せるものだろうか――と日本人は思う。その答えは歴史にある。

 韓国の歴代王朝は19世紀末まで、中華王朝の冊封体制下にあった。外から見れば属国だが、韓国人の集団的な記憶では「中国に守られ、結構うまくやっていた」のである。

 中国も韓国人のそんな心情は知り尽くしている。中国と近い朴槿恵政権の時代、それも北の核への不安が一気に増した今、韓国を取り込んでおこうとするに違いない。

 “核保有国”となった北朝鮮に世界の目が注がれる。だが、極度の不安に陥った南の動きにも注意を払うことが必要だ。実はこの韓国の動揺こそを、中国は「待っていた」のかもしれない。

【早読み 深読み 朝鮮半島】「韓国の核」シリーズ

●一歩踏み出した韓国の核武装論
今度は「原子力潜水艦を持とう」

●日本を「一撃」できる国になりたい
「日韓併合」をバネに核武装

●核武装して“奴隷根性”を捨てよう
親米派も「今度こそ、米国の脅しは聞かない」

●「核武装中立」を覚悟する韓国
それは、中国にとっても悪くない