洞が峠の大統領

しかし、米国が戦争を始めてしまったら、韓国は巻き込まれませんか?

鈴置:確かに、戦争が始まってから「局外中立」を宣言しても間に合わないでしょう。北朝鮮は直ちに在韓米軍基地やソウルを標的に反撃しますから。

 ただ、米国が北朝鮮への攻撃を決意したら、開戦1週間前には韓国から非戦闘員を待避させると見られます。米国人の脱出が始まった段階で「中立宣言」を発すれば間に合うかもしれません。もちろんそれは事実上の「米韓同盟破棄宣言」となります。

 大統領特別補佐官の「同盟破棄論」は米国に対する牽制が本当の目的なのかもしれません。「戦争を始めようとしたら中立を宣言する。米国は戦争の名分を失うぞ」との脅しです。

文在寅大統領はどう考えているのですか。

鈴置:「同盟破棄論」が念頭にあるのは間違いないと思います。文正仁特別補佐官の「危険な発言」を放置しているのです。

 特別補佐官はこれまでも、米国を激怒させる「反米親北」発言を繰り返してきたというのに、です(「『米韓合同演習』を北に差し出した韓国」参照)。

 そもそも、同盟よりも民族が重要と考える左派の支持を受けて当選した人です。ご本人の愛読書が「米帝国主義を批判する本」。韓国民がこぞって読むべきとも推薦しています(「『米帝と戦え』と文在寅を焚き付けた習近平」参照)。

 しかし、展開が読めない現時点では、反米色を露骨に出せない。「反米国家」の韓国にはろくに相談せず、米国が北朝鮮の核保有を限定的に認めたうえ、平和協定を結んでしまうかもしれないからです。

 米朝協議に絡んでおかないと、韓国は米国に見捨てられたあげく、米国と関係を改善した北朝鮮からも相手にされなくなるでしょう。

 そこでトランプ大統領に対しては「北朝鮮への制裁に力を尽くす」と約束する一方、裏で対北援助に動く(「金正恩をコーナーに追い詰めたトランプ」参照)。文在寅政権は洞が峠を決め込んでいるのです。