やりたい放題やっても罰はなし

「部下に騙されているぞ。核の均衡など夢想するな」と耳元でつぶやいた……。

鈴置:部下も「騙す」というよりも「引っ込みがつかなくなっている」のだと思います。これまで北朝鮮はやりたい放題。それでも国際社会から罰を受けなかった。

 アジア安保の専門家、ニューシャム(Grant Newsham)米海兵隊・退役大佐は「北朝鮮がなぜ、自殺行為に及ぶのか」との疑問に対し、以下のように答えています。

 Asia Times の「North Korea: Doesn’t Kim Jong Un understand ‘suicidal’?」(9月2日)で読めます。

  • 米国、日本、韓国など国際社会は、行いを改めるとの約束と引き換えに食糧、カネ、石油、果ては原子炉まで与えてきた。
  • (というのに)北朝鮮は、ラングーンで韓国の閣僚を爆弾で殺す。韓国の戦闘艦を潜水艦で撃沈する。日本人を拉致する。ミサイルを発射する。核兵器を作っては試験する。人で混み合う(マレーシアの)空港では白昼堂々と義理の兄弟を毒で殺す。
  • なぜか?(やりたい放題やっても)何も起きなかったからだ。

 国全体がそんな「成功体験」に酔っている時に「いいかげんにしとかないと、そろそろ殴られますよ」と意見具申する部下はまず、いないのです。

日本からもお祝い

会社も同じです。

鈴置:在日朝鮮人のグループが9月19日、建国69周年を祝う手紙を金正恩委員長に送っています。朝鮮中央通信の「在日本朝鮮人祝賀団メンバーによる手紙」(9月21日)が報じました。日本語版から、その一部を引用します。

  • 世界を震撼させた大陸間弾道ロケット装着用水爆実験の大成功と9月の祝日をより意義深く輝かした各軍民慶祝大会を通じて共和国の強大無比の威力を全身で痛感しながら金正恩委員長が居て朝鮮革命の最後の勝利は確定的だという鉄の真理をいっそう心に深く刻み付けた。

 北朝鮮の核ミサイルの標的となっている日本からも「水爆実験成功のお祝い」が寄せられるのです。金正恩氏ら指導部はさぞ、高揚した空気に包まれていることでしょう。

北朝鮮の『「空気」の研究』ですね。

鈴置:こういう空気の下では、判断を誤り続けます。北朝鮮の指導層は「我が方が核で反撃するのを恐れ、米国は先制攻撃して来ない」と信じている、あるいは信じたがっているのです。