攻撃はいつ?

北朝鮮が核を放棄しない場合、米国はいつ攻撃に出ますか。

鈴置:「今すぐ」ではないと思います。なぜなら、トランプ大統領は国連演説で、金正恩が敵対的な姿勢をとるのを止めるまで国連加盟国は北朝鮮への経済制裁をより強めるべきだと訴えたからです。

  • But we must do much more. It is time for all nations to work together to isolate the Kim regime until it ceases its hostile behavior.

 北朝鮮を圧迫する余地はまだある。徹底的に圧迫しよう。ただ、それでダメなら軍事力を使う――と言っているのです。

 日本も安倍晋三首相がインドを訪問して北朝鮮との貿易を止めるよう頼みました。河野太郎外相もUAEに北朝鮮の労働者の数を減らすよう要望しました。米国と足並みを揃え、経済制裁を極限まで強化する方針です。

メディア含め国を2分

韓国も各国に北朝鮮に対する制裁を強めるよう、頼んでいるのですか?

鈴置:それどころではありません。韓国では軍と青瓦台(大統領府)が対立し始めました。

 北朝鮮問題が煮詰まるに連れ、米軍と一緒に北に強く出たい軍と、北朝鮮に近い人々が要所を押さえる青瓦台の関係がおかしくなっていました。

 戦術核の再配備問題でも、宋永武(ソン・ヨンム)国防長官がマティス国防長官との会談でそれに触れたと説明すると、青瓦台が直ちに全面否定しました(「ミサイル乱射の中、『親北』に突き進む韓国」参照)。

 その宋永武国防長官が9月19日、青瓦台から厳重注意処分を受けました。左派で北朝鮮と近い、大統領・統一外交安保特別補佐官の文正仁(ムン・ジョンイン)延世大学特任名誉教授との対立が原因です。

 対立点は金正恩委員長ら北朝鮮首脳部の暗殺を実行する「斬首部隊」です。北朝鮮の6回目の核実験の翌9月4日、宋永武長官は国会で「今年12月1日付で斬首部隊を設立する」と語りました。これに対し「北朝鮮を刺激するな」と文正仁教授が反発したのです。

 厳重処分の理由は「文正仁教授に対する言葉遣いが悪かった」ということです。が、文正仁教授の言葉も相当に乱暴なので、世間はそうは受け取りません。「大統領は『斬首部隊』など対北軍事作戦に反対する親北左派の手をあげたな」と思ったのです。

 韓国は政党とメディアを含め、大きく2つに割れました。野党の自由韓国党と朝鮮日報など保守派は当然、軍の肩を持ちました。一方、与党「共に民主党」やハンギョレ、キョンヒャン新聞といった左派は文正仁教授――親北派を支持しました。

 第2次朝鮮戦争がいつ起きるか、と世界が固唾を飲んでいる時に、韓国では世界とともに北朝鮮と戦うか、あるいは北の側に付くかで内輪もめが始まったのです。

次回に続く)

大好評シリーズ最新刊 好評発売中!
Amazon「朝鮮半島のエリアスタディ 」ランキング第1位獲得!
孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。