取引にはワナがある

米政府高官とは?

鈴置:9月17日、マクマスター(H.R. McMaster)大統領補佐官(国家安全保障担当)はABCのインタビューで「金正恩が核兵器を手放さない時、トランプ大統領は攻撃するか」と聞かれ「トランプ大統領はこの点に関し大変に明快だ。すべての選択肢が机の上にある」と答えました。先制攻撃の可能性を示唆したのです。

 「何らかの取引で解決すべきか」との質問には「交渉には大きなワナがある。北朝鮮は約束をしては破ることを繰り返してきた」とはっきりと否定しました。

 同じ日、ティラーソン国務長官はCBSのインタビューに答え、米国の公約である「4つのNO」を改めて強調しました。それに加え「外交的な努力が失敗すると、ただ1つ残るのは軍事的な選択肢だ」と明言したのです。

 「4つのNO」とは、北朝鮮が核開発を放棄するなら(1)体制変更は求めない(2)金正恩政権の崩壊を目指さない(3)朝鮮半島の統一を加速しない(4)38度線(軍事境界線)を越えて北進しない――です。

 5月3日、国務省職員への演説で表明したものですが、8月1日の会見でもこれに言及し「平和的な解決」を北朝鮮に呼び掛けた経緯があります(「中国にも凄んで見せたトランプ」参照)

変容した「4つのNO」

「4つのNO」は言い続けているのですね。

鈴置:ええ。しかし、その意味をガラリと変えました。9月17日のCBSとのインタビューでは「4つのNO」を「平和的な圧力作戦」(peaceful pressure campaign)と意義付けました。

 これまでは「核実験を中断すれば対話を実施する」など、何らかの取引も念頭に置いていたので、北に対話を誘うため「4つのNO」を提示していた。

 ところがもう、対話は期待できなくなった。そこで「核・ミサイルを放棄しないと攻撃するぞ。地上軍で侵攻はしないけれどな」との威嚇に使うようになったのです。もちろん中国とロシアに向けた、軍事攻撃の覚悟を示すメッセージでもあります。

 さらに同じ9月17日、ヘイリー(Nikki Haley)国連大使はCNNのインタビューで「我々は外交的手段で解決する責務を負うが、うまく行かない時はマティス(James Mattis)国防長官の出番となる」「北朝鮮が邪悪な行動を続ける限り、破壊されることになる」と語りました。

 そのマティス長官は翌9月18日、「(北朝鮮を先制攻撃した際)、ソウルへの反撃を防げるのか」との問いに「防げる。ただし、その方法には言及しない」と答えました。

 「ソウルを火の海にする」といった北の脅しに屈するな、と韓国人に訴えたのです。ロイター通信の「Mattis hints at military options on North Korea but offers no details」(9月19日、英語版)が報じました。