ムクゲノ花ガ咲キマシタ

 その夢を描いたのが小説『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』(1993年)です。南北が協力して核兵器を作り、日本に核ミサイルを撃ち込んで侵攻する、という粗筋です。日本語版では侵攻部分は削られていますが。

 書いたのは左派の作家、金辰明(キム・ジンミョン)氏。100万部のベストセラーとなり、映画化もされました。よほど韓国人の心に響いたのでしょう。

 日本では「反日小説」として受け止められました。もちろんそうなのですが「民族を分裂させて自分たちを支配する米国」への怒りを表出した作品でもあります。

 左派に限らず、韓国人の心の奥深くにある米国に対する複雑な感情を代弁する一方、この本は人々を民族和合と自主独立へと駆り立てました。

 文在寅大統領のスローガンが「自主国防」です。米国の軍事力のくびきから脱し、北朝鮮の同胞と手を取り合う――のが大方針です。

 南北和合がそんなにうまくいくのかなあ、と思いますが、とにかく左派は「米国との同盟」よりも「民族の団結」が大事なのです。

原潜保有に動く韓国

「核を否定しない左派」ということですか?

鈴置:「左派は核に反対する」というのは日本だけの発想です。日本にだって少し前まで「米国の核はいけないが、ソ連の核は防衛用だからいいのだ」と真顔で唱える左派がいたではないですか。

 文在寅政権は核武装に不可欠な原子力潜水艦の保有に動いています。これを見ても大統領が反核派でないことが分かります。

 原子力潜水艦がないと、核武装は完成しません。敵の先制攻撃で核ミサイル施設を打撃されたらお終いだからです。原潜は長期間、水中に隠れることができるため、先制攻撃を受けた後にも反撃できる貴重な「第2撃能力」を有します。

 8月7日の電話協議で、文在寅大統領はトランプ大統領に原潜保有を打診しました(「ついに『中立』を宣言した文在寅」参照)。

 9月17日の米韓首脳の電話協議に関連、朝鮮日報は「今週(国連総会の場で)開かれる米韓首脳会談で、韓国の原潜計画推進に向け、両国が協力するとの原則で合意される模様」と報じました。

 「韓米首脳が電話協議 800万ドルの対北支援問題は事前協議で回避」(9月18日、韓国語版)で読めます。

 米国離れする韓国に対し、米国が本気で協力するとも思えませんが、とにかく文在寅政権は「原潜一直線」なのです。

 「文在寅の原潜」は北朝鮮製の核を搭載するのかもしれませんし、自前の核を積むのかもしれません。いずれにせよ、その核が北を向かないことは確かです。