戦争狂の米国の方が危険

でも現実には、核武装したからこそ攻撃されそうになっている。

鈴置:北朝鮮の指導層は今を乗り切って米国に核保有を認めさせれば――米国との間に核均衡を作り出せば、明るい未来が待っていると国民に教えています。自分たちもそう信じたいのでしょう。

それを信じる人が韓国にもいるのですか?

鈴置:北朝鮮を支持する人たちはそう、信じています。そこまで信じなくとも「米国は戦争狂だ。朝鮮半島で戦争をやりたがっている。北朝鮮よりも危険だ」と考える人は韓国に結構います。

 2017年3月23日に韓国で出版された『運命から希望へ』という本があります。分析心理学者のイ・ナミ・ソウル大学医学部外来兼任教授が当時、大統領選挙に出馬する意向を固めた文在寅(ムン・ジェイン)氏に所信と政策を聞きました。要は選挙対策用の本ですが、イ・ナミ兼任教授は以下の質問をしています。

  • ところで我々、普通の人の考えでは、トランプ(Donald Trump)はあまりに保守的で企業に好意的なようで、武器商らと関係があるようです。彼らは戦争をすれば米国経済がよくなると考えるでしょう。我が国で局所的な戦争をすれば武器も売れ、米国経済の助けになるので、いつかは戦争を起こしてやろうと考える人もいませんか?(246ページ)

 イ・ナミ兼任教授は北の核武装が「人類史的な功績」とは言っていません。でも、米国が戦争を起こしかねないと信じています。そんな人の耳には「北の核は朝鮮半島の核均衡を通じ、平和をもたらす」との論理は、ある程度の正当性を持って響くと思います。

北の核は民族の核だ

その質問に、文在寅氏はどう答えましたか。

鈴置:1994年の核危機の例を挙げ、米国は北爆を計画したが、こちら側の被害も大きいので断念した――との趣旨で答えています。

 「米国は戦争好き」との発言を暗に認めたうえで「だから対話しかない」と自説の正しさを訴えたのです。

対話で北朝鮮は核を放棄すると未だに考えているのでしょうか?

鈴置:文在寅大統領は「対話で解決する」との旗印を降ろしていません。トランプ大統領に叱られたので「圧力強化」などと言ってみせていますが(「トランプは満座の中で文在寅を叱った」参照)。

 左派の発想からすれば、韓国が北朝鮮との関係を改善すれば、その核は危険ではないのです。上手くすれば「民族の核」として共有できると考えているのです。