ワシントンから強力な援軍

宋永武国防長官は青瓦台に叱られたでしょうね。

鈴置:そう思います。しかしこの後、軍や保守党には強力な援軍が到来しました。9月8日、米NBCが「Trump Team Prepping Aggressive Options for North Korea」で「韓国への戦術核の再配備も排除しない」との匿名のホワイトハウス高官の談話を報じたのです。原文は以下です。

  • In addition, the administration is not ruling out moving tactical nuclear weapons to South Korea should Seoul request them, a White House official said, though many consider such a move a nonstarter. It would break with nearly three decades of U.S. policy of denuclearizing the Korean Peninsula.

 これで勢いづいたのが韓国の再配備論者です。韓国党はトランプ大統領に再配備を要請する手紙を送ることを決めたほか、国内政局の争点に浮上させるため、世論喚起に動きました。

 東亜日報の「最大野党自由韓国党、『戦術核再配備』要請でトランプ大統領宛て書簡へ」(9月11日、日本語版)が伝えています。

 保守系の2紙も9月11日、改めて社説で再配備を米国に求めるよう主張しました。東亜日報の社説は「米国で出てきた戦術核再配備論、THAADを記憶せよ」(日本語版)、朝鮮日報は「文政権はどんな対案があって国民を守る機会を見逃すのか」です。

 9月10日には米国防族の大御所、マケイン(John McCain)上院議員が「数日前、韓国の国防長官が核の再配備を求めた。これを真剣に検討せねばならぬ」とCNNに語りました。

 発言は「John McCain: North Korea must know price for aggression is ‘extinction’」によると以下 です。

  • "The Korean defense minister just a few days ago called for nuclear weapons to be redeployed," McCain told anchor Jake Tapper, adding he thought "it ought to be seriously considered."

首脳会談で約束したではないか

 さらに米政府が運営するVOA(アメリカの声)が、戦術核の再配備を拒否する文在寅政権を暗に批判する記事を載せました。

 「国務省、『朝鮮半島に戦術核配備を検討』との主張に『全ての手段で北を圧迫と約束』」(9月12日、韓国語版、談話部分は英語と韓国語)です。

 国務省のチェ(Grace Choi)東アジア・太平洋担当報道官の「トランプ大統領と文在寅大統領は北朝鮮に最大の圧迫を加えるため、すべての手段を動員しようと合意した。両大統領は連合戦力の強化も約束している」という談話から始まっています。

  • “President Trump and President Moon Jae-in agreed to maximize pressure on North Korea using all means at their disposal. They also pledged to strengthen joint military capabilities.”

 確かに米韓首脳は6月の米韓首脳会談で「北朝鮮に対抗するための連合戦力の強化」を約束しています。共同宣言にも入れています(「『戦闘モード』に韓国を引き込んだ米国」参照)。

 VOAは再配備に関し、米政府がどんな方針かは報じませんでした。が、チェ報道官の発言を読んだ人は「米国は再配備に前向きだな」と思います。「文在寅がまた、米国を裏切ったな」と考える人もいるでしょう。