本性を現した文在寅政権

真田:米国は「石炭」以上に「南北連絡事務所」に神経を尖らせています。この事務所の開設は開城工業団地の再開が目的です。北朝鮮は開城工業団地を起爆剤に工業近代化を進める計画です。
北が韓国のバックアップで経済力を付け始めれば、トランプ政権が示している経済協力というエサが実効性を持たなくなる可能性がある。非核化など、どこかへ行きかねません。
鈴置:北朝鮮は日本に「対話の輪から取り残されるぞ」と、しきりに言ってきます。「孤立したくないならカネを出せ」ということです。韓国に続き、日本も資金パイプにしたいのです。
南北関係の改善を名分に対北援助に動く文在寅政権に対し、米国は警告を発しています。しかし文在寅政権は馬耳東風。
9月7日には、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官がはっきりと「非核化より関係改善が重要」と語りました。韓国では、文在寅政権の本音を語ると見なされている人です。
朝鮮日報の「文正仁『非核化に全てが隷属すれば南北関係も北朝鮮の変化も難しい』」(9月7日、韓国語版)から発言を拾います。
- 非核化は重要だがそれに全てが隷属すれば、南北関係も上手くいかないし、朝鮮半島の平和体制もならないし、北朝鮮の経済的な変化も難しい。
さらに以下のようにも述べ、露骨に北朝鮮の肩を持ちました。
- 非核化と朝米国交正常化は時間的にほぼ同時に進むのかもしれないが、個人的には朝米正常化を思いきって先に実施すべきと考える。
非核化を進める前に米朝が国交を正常化すれば、北朝鮮は非核化に応じる動機を失います。北はこれまで何度も非核化の約束を破り、米国などの譲歩を食い逃げしてきました。
▼1度目=韓国との約束▼ | |
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・1991年12月31日 | 南北非核化共同宣言に合意。南北朝鮮は核兵器の製造・保有・使用の禁止,核燃料再処理施設・ウラン濃縮施設の非保有、非核化を検証するための相互査察を約束 |
→・1993年3月12日 | 北朝鮮、核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言 |
▼2度目=米国との約束▼ | |
・1994年10月21日 | 米朝枠組み合意。北朝鮮は原子炉の稼働と新設を中断し、NPTに残留すると約束。見返りは年間50万トンの重油供給と、軽水炉型原子炉2基の供与 |
→・2002年10月4日 | ウラニウム濃縮疑惑を追及した米国に対し、北朝鮮は「我々には核開発の資格がある」と発言 |
→・2003年1月10日 | NPTからの脱退を再度宣言 |
▼3度目=6カ国協議での約束▼ | |
・2005年9月19日 | 6カ国協議が初の共同声明。北朝鮮は非核化、NPTと国際原子力機関(IAEA)の保証措置への早期復帰を約束。見返りは米国が朝鮮半島に核を持たず、北朝鮮を攻撃しないとの確認 |
→・2006年10月9日 | 北朝鮮、1回目の核実験実施 |
▼4度目=6カ国協議での約束▼ | |
・2007年2月13日 | 6カ国協議、共同声明採択。北朝鮮は60日以内に核施設の停止・封印を実施しIAEAの査察を受け入れたうえ、施設を無力化すると約束。見返りは重油の供給や、米国や日本の国交正常化協議開始 |
・2008年6月26日 | 米国、北朝鮮のテロ支援国家の指定解除を決定 |
・2008年6月27日 | 北朝鮮、寧辺の原子炉の冷却塔を爆破 |
→・2009年4月14日 | 北朝鮮、核兵器開発の再開と6カ国協議からの離脱を宣言 |
→・2009年5月25日 | 北朝鮮、2回目の核実験 |
▼5度目=米国との約束▼ | |
・2012年2月29日 | 米朝が核凍結で合意。北朝鮮は核とICBMの実験、ウラン濃縮の一時停止、IAEAの査察受け入れを約束。見返りは米国による食糧援助 |
→・2012年4月13日 | 北朝鮮、人工衛星打ち上げと称し長距離弾道弾を試射 |
→・2013年2月12日 | 北朝鮮、3回目の核実験 |
トルコ危機に怯える
米国はそんな韓国を放置するのでしょうか。
真田:いざとなれば通貨を使って「お仕置き」すると思います。1997年のアジア通貨危機の際、韓国ウォンが売り浴びせられたのも、当時の金泳三(キム・ヨンサム)政権が米国との関係を極度に悪化させていたのが原因と国際金融界は見ています(「米国は日韓スワップを許すか」参照)。
そして今、再び通貨危機の足音が響いてきました。新興国からマネーが逃げています。同時に新興国の国債などの空売りも始まりました。1997年のデジャブです。
鈴置:1997年に限りません。これまで韓国に反米政権が登場するたびに、米国は通貨を使って警告を発してきました(「『懲りない韓国』に下す米国の鉄槌は『通貨』」参照)。
今回も米国の「韓国を通貨で脅す」動機は十分です。米国の非核化への努力をこれほど露骨に邪魔し始めたのですから。
米国人牧師の拘束問題で米国と対立したトルコのリラが暴落したのを見て、韓国人はひやりとしました。中央日報は8月16日、「トルコ危機、韓国も安心できない」(日本語版)との社説を載せました。日本語を手直しして引用します。
- トルコ危機が対岸の火事で終わるとは限らない。過去のアジア通貨危機と米国発金融危機がそうだったように、通貨危機は急速に波及する。トルコ危機は新興国の為替市場の不安に油を注いでいる。
- 米利上げが本格化すれば、経済が脆弱な新興国から資本が流出する。アルゼンチン・南アフリカ・メキシコ・ブラジル・ロシアが通貨不安定に直面した理由だ。
- 外貨による負債が多い韓国も安心できない。韓国の国内総生産(GDP)比の外貨負債は41%にのぼる。トルコ(70%)・ハンガリー(64%)・アルゼンチン(54%)ほどではないが、いつでも危険が転移するおそれがある。
この社説は米韓関係の悪化には触れていませんが、文在寅政権の「北シフト」は激しくなるばかり。普通の韓国人が読めば「米国の報復」に思い至ります。
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