
(前々回から読む)
突然、日本に通貨スワップを求めてきた韓国――。真田幸光・愛知淑徳大学教授と朝鮮半島を巡る「通貨の戦い」を読んだ。
妄想外交のツケ払う韓国
鈴置:「日本に頭を下げてまで外貨を借りるつもりはない」と突っ張っていた韓国。予想外のスワップ要請に驚いた人も多いと思います。

真田:韓国はとても焦っています。米国だけではなく、頼みの綱だった中国からも距離を置かれることが確実になったからです。
日本へのスワップ要請はその象徴です。せめて金融面での孤立を回避しておかないとまずい、との判断でしょう。
鈴置さんが「『中国の通貨スワップ』を信じられなくなった韓国」で書いたように中国との関係が悪化し、いざという時にスワップを発動してもらえるか自信がなくなったのです。
鈴置:韓国の新聞を読むと、毎日のように「四面楚歌」「孤立無援」といった単語に出くわします。(「二股外交の失敗が加速する『韓国の核』」参照)。
韓国人の孤独感は日本人の想像以上のものがあります。彼らは根拠もなく「キャスティングボートを握った我が国は、米中双方からラブコールを受けている」と信じ込んでいた。
そしてある日、中国から脅され辺りを見回して、周辺国すべてから相手にされていないことにようやく気づいた。
もちろん、米中は韓国には操られません。日本や北朝鮮も韓国は無視しました。米中を手玉に取り、両大国の力を背景に日本と北朝鮮を叩く――という朴槿恵(パク・クンヘ)外交が空振りに終わったのです。韓国人は誇大妄想のツケを支払う羽目に陥りました。
トランプでもヒラリーでも
真田:朴槿恵外交の稚拙さに加え、周辺大国の変化も韓国を苦境に追い込みます。次の大統領がヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)になろうとトランプ(Donald Trump)になろうと、米国の新政権は韓国をこれまで以上に軽く扱うでしょう。
トランプはご覧の通り、韓国や朝鮮半島に関心はありません。韓国を含む同盟国に「米国に対しもっと防衛分担費を払え。それが嫌なら核を持ってもいいから、自分で自分を守れ」と言い放っています。
ヒラリーは韓国にとって、もっと「怖い」大統領になる可能性があります。トランプとは正反対に彼女は世界をよく知っている。ことに中国とは水面下で深くつながっている。
朝鮮半島で何かをなす際、韓国をつなぎとめるために甘い顔をせずとも、中国と直談判すればいいのです。ヒラリーにはそれをやれる自信がある。韓国は米国に今以上に冷たくされることになります。
鈴置:ヒラリー・クリントンは米国に対する「韓国の裏切り」をよく知っていて、公開の席で非難したこともあります。
真田:中国も韓国の「裏切り」に怒っています。THAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)の容認でメンツを潰されたからです。
今も「THAADに反対しろ」と韓国を脅し続けています(「『THAAD』を逆手に取る中国、韓国を金縛りに」参照)。
そして中国もまた、朝鮮半島問題はヒラリーと直接交渉すればいいと考えるでしょう。韓国を取り込んで対米カードに育てる必要性は薄れたのです。
Powered by リゾーム?