米国の手足は止めよ

北朝鮮はどうするつもりでしょうか。

鈴置:日本で、先制攻撃への反対論を盛り上げると思います。すでに日本に対し「米国に協力したら、核で攻撃するぞ」と脅し始めています。

 先ほど引用した朝鮮中央通信の9月7日の記事は、米国に現状追認を求める一方、日本を威嚇しました。

  • 日本は自らの立場をはっきりと悟り、これ以上米国の手足として醜悪に振る舞うことは止めねばならない。
  • 日本反動層に対する骨髄に徹する恨みを抱いているわが軍隊と人民は、米国にへつらって反共和国制裁騒動に先頭で加担してきた現日本当局の罪科まで徹底的に清算する時だけを待っている。
  • 我々の水素爆弾の実験成功以来、驚き慌てる日本の醜態にはやはり、むかつかざるを得ない。
  • 人々はそれが軍事大国化実現に拍車をかけるための浅薄な計略と見抜いている。
  • 日本は、恐ろしい打撃力と命中効果を持った多種多様な原爆と水爆、弾道ミサイルを保有した世界的な軍事強国である朝鮮民主主義人民共和国が、最も近くにあることを心に刻まなければならない。

 最初の2つの文章と最後の1文で「核攻撃されたくないなら米国に追従するな」と脅しました。そして3番目と4番目の文章で「安倍政権の軍国主義化へのたくらみ」を指摘しました。

「北を刺激するな」

隣に登場した核保有国が怖くないのか、ということですね。

鈴置:日本語のネット空間には、この記事が載ったころから「核を持った北を刺激してはならない」との言説が一気に目立つようになりました。北朝鮮の意向に沿って「経済制裁や米国の軍事行動を支持したら大変なことになる」と言い出した人たちがいるわけです。

 それまで北朝鮮に近い人は「日本は対話すべきだ」「米朝の仲介の労を日本がとるべきだ」などと言っていたものですが。

なぜ、彼らは「対話」を言わなくなったのでしょうか。

鈴置:「対話」を言われると北朝鮮が困るからです。強力な核兵器と米国の西海岸に届くであろうミサイル持った以上、北朝鮮はその新たな現状を変えたくはないのです(「北朝鮮にはもう、対話など必要ない」参照)。

 対話は程度の差はあれ現状の変更を話し合うわけですから、北朝鮮にとって「百害あって一利なし」です。

 もし、世界で「対話しよう!」との声が高まれば「対話に応じない北朝鮮」の姿が浮き上がってしまいます。だから「対話ムード」が盛り上がらないよう、北朝鮮は「核とミサイルは交渉の対象ではない」と繰り返すのです。

反安倍勢力をテコ入れ

この記事は安倍晋三政権も批判しています。

鈴置: 「日本の軍事大国化」を批判する、日本の反安倍勢力を使って、米国との共闘を止めさせるつもりでしょう。

 米国は韓国の協力がなくても「第2次朝鮮戦争」は何とか戦えます。しかし、在日米軍基地と日本の補給力がないと戦えません。北朝鮮もそれはよく分かっていますから、反安倍勢力へのテコ入れに必死なのです。

 日本語のネット空間では「米国も含め世界が平和を望んでいる。戦争を欲しているのは日本の安倍だけだ」という文句も飛び交うようになりました。「やはり、こう来たな」という感じです。

次回に続く)

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。