独自制裁を避ける韓国

この青瓦台の発表も「制裁と圧迫」に触れています。

鈴置:まやかしです。韓国は日本や米国と異なり、対北独自制裁を実施していません。北朝鮮への原油禁輸に関しても少なくとも6回目の核実験まで、韓国政府が公式の場で主張したことはありません。

 8月下旬の米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」でも、北朝鮮を刺激しないよう米軍の行動に制限を付けていました。

 宋永武(ソン・ヨンム)国防長官は9月4日、国会で追及されて「演習の最中に米爆撃機が軍事境界線付近に来ないように要求した」と告白しました。

 朝鮮日報の「宋永武国防長官『米爆撃機、乙支訓練時にDMZに近接しないよう要求』」(9月4日、韓国語版)が報じています。

青瓦台は「米国も対話に同意した」と主張しています。

鈴置:それもウソです。6月30日の米韓共同声明を見れば明らかです。「両国は北朝鮮との対話において緊密に協調する」――つまり米国が認める範囲内での対話を韓国に認めたに過ぎません。この状況下での対話呼びかけに、米国は極めて批判的です(「『戦闘モード』に韓国を引き込んだ米国」参照)。

国民の命を守る大統領?

「文大統領は国民の生命と財産を守りたいだけなのだ」と口を尖らせる韓国人もいます。

鈴置:大統領が本気で国民の生命・財産を守るというなら、THAAD(サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)の追加配備を邪魔しなかったはずです。

 在韓米軍基地に置かれる発射台が2基から6基になればその分、韓国の被害を確実に減らせる。抑止効果――「ミサイルで先制攻撃しても撃ち落とされるうえ、反撃されるから攻撃しない方がいい」と北朝鮮に考えさせる効果も増します。

 THAAD配備を妨害しながら「国民の生命と財産を守る大統領」と胸を張られても、納得する人がどれだけいるでしょうか。

 韓国の保守には、THAAD配備を容易に認めなかったのは「反米をやっています」と金正恩(キム・ジョンウン)委員長にゴマをするため、と見る人が多い。

 この政権はスタート以来、南北対話の実現に執念を燃やしてきました。そのためには北朝鮮の歓心を買うことが必須なのです「早くも空回り、文在寅の『民族ファースト』」参照)。

 先ほど引用した中央日報の「青瓦台、トランプのツイートに『戦争は繰り返せない……平和を通じた朝鮮半島の非核化を放棄しない』」(9月4日、韓国語版)への読者の書き込みも、以下のような大統領批判ばかりでした。

  • 平和を追求するとは結局、北の核を認めるということか。
  • 対話は相手を見てせよ。戦争を準備し、脅迫して来ている相手なのだ。
  • (この青瓦台の発表は)トランプに電話しても出て貰えないので(仕方なく、ネットなどに)「書き込み」をしているようなものだ。恥ずかしい。