バイデンは調停委員

従軍慰安婦問題で、韓国政府は国民の反対を押し切って日本と合意しました。日本側に戻ったとは言えませんか?

鈴置:それも誤った認識です。そもそも韓国の要求が無理筋だったのです。日本は何度も謝っておカネも出している。

 というのに、また日本を叩いて国民の楽しみに供そうとしたので、さすがに日本も怒りました。日本が韓国の思い通りにならないのは、当たり前なのです。

 それに慰安婦合意で韓国は「日本」ではなく「米国に屈した」のです。離米従中の言い訳にまで「慰安婦」を使うので、米国も怒って韓国に圧力をかけました。

 2015年2月には、当時のシャーマン(Wendy Sherman)国務次官が「政治指導者が過去の敵を非難し、安っぽい拍手を受けることは容易なことだ。しかし、そんな挑発は発展ではなく、マヒをもたらす」と演説するに至った(「『米大使襲撃』で進退極まった韓国」参照)。

 もちろん韓国政府は「慰安婦合意は米国の圧力の結果だ」とは絶対に認めない。二股外交で米中を操っていると国民に宣伝してきたのに「米国に屈した」ら、虚構が崩れてしまいます。

 でも最近、米国のバイデン(Joe Biden)副大統領が「自分が慰安婦問題で日韓をまとめた」と明かしました。米誌「アトランティック」(The Atlantic)電子版(2016年8月26日号)で以下のように語っています。

  • Or, you know, [Korean President] Park [Geun-hye] and [Japanese Prime Minister Shinzo] Abe. I go to see Abe and he says to me, “Will you help me with Park?” And I call her and say, “Will you do this?” And I don’t negotiate the agreement, but the end result was, because I had a personal relationship with both of them and they trusted me, I could be an interlocutor, that was more like a divorce counselor, putting a marriage back together.

 「安倍に会ったら『朴との関係を助けて欲しい』と言われた」「そこで朴に『こうするつもりはないか』と電話した」「自分は結婚生活を元に戻す調停委員の役割を果たした」――というわけです。

相変わらず告げ口外交

「結婚生活は元に戻った」のではないですか。

鈴置:バイデン副大統領がそう思っても、朴槿恵大統領はそうは思っていないようです。「米国と、その後ろにいる日本に屈した」のがよほど不快だったのでしょう。

 2015年12月28日の「慰安婦合意」で日韓両国はこの問題に関し「最終的かつ不可逆的に決着する」と約束しました。

 しかし、朴槿恵大統領はその後も世界に向かって「日本は反省していない」と告げ口外交を展開しているのです。

 例えば、ブルームバーグ(Bloomberg)通信の2016年3月30日の書面インタビューで「日本が歴史を直視しないことが日韓の未来志向的な関係の発展を妨害している」と述べています。

 「Park says South Korea Must Rid of the World Nukes, Not Develop Them」という記事の最後のくだりが以下です。

  • "The issues related to history have continued to be a stumbling block to the development of a future-oriented bilateral relationship,” Park said of Japan, a nation that occupied the peninsula for 35 years until its surrender in 1945. Japan should “squarely face history and make efforts to properly educate future generations without forgetting past wrongdoings."

 今後、もし米国からの圧力が弱まって、もっと中国側に傾くことになったら韓国は「慰安婦合意」など、いとも簡単にひっくり返すでしょう。

次回に続く)

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