「素っ裸」の韓国

中韓スワップ協定には「韓国が反中的な行為をしたら発動しない」との条項が入っているのですか?

鈴置:細かな条文は発表されていないので、分かりません。でもそんな条項がなくとも、韓国が中国の怒りを解かない限り、スワップは発動されない可能性もある、と専門家は読むものです。

 普通の国なら、他国に常識外れの報復をすれば自らの品位も傷つくと懸念します。でも、品位があると見られていない国は、そんな心配はしません。やりたい放題です。

 9月3日、オバマ(Barack Obama)大統領が中国・杭州での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に参加した時の話です。国家指導者が飛行機から降りる際に使うレッドカーペットの敷かれたタラップが提供されませんでした。

 英ガーディアン(The Guardian)は「Barack Obama ‘deliberately snubbed’ by Chinese in chaotic arrival at G20」で、中国と南シナ海などで対立を深める米国への嫌がらせであると報じました。世界は児戯に等しいことをするとあきれました。

確かに、中国ならスワップの約束も簡単に破りそうですね。

鈴置:実際に約束が破られなくとも「中韓スワップが怪しくなったな」と世間に見られるだけで、韓国にとっては大きなマイナスです。

 「韓国の通貨スワップ」を見れば分かる通り、中国とのスワップは2国間スワップの70%弱を占めます。完全に「中国頼み」なのです。

韓国の通貨スワップ(2016年9月7日現在)
相手国 規模 締結・延長日 満期日
中国 3600億元/64兆ウォン(約560億ドル) 2014年
10月11日
2017年
10月10日
UAE 200億ディルハム/5.8兆ウォン(約54億ドル) 2013年
10月13日
2016年
10月12日
マレーシア 150億リンギット/5兆ウォン(約47億ドル) 2013年
10月20日
2016年
10月19日
豪州 50億豪ドル/5兆ウォン(約45億ドル) 2014年
2月23日
2017年
2月22日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約100億ドル) 2014年
3月6日
2017年
3月5日
CMI<注> 384億ドル 2014年
7月17日
<注>CMI(チェンマイ・イニシアティブ)は多国間スワップ。IMF融資とリンクしない場合は30%まで。
資料:ソウル新聞「韓国の経済体力は十分」(2015年2月17日)

 そして、中国とのスワップもそうですが、残りの30%もドル建てではなく、ローカルカレンシー同士のスワップに過ぎません。いざという時に非ドル建てスワップの効果があるのか、疑問視する向きも多い。

 スワップという金融の防壁を失った韓国は今、資本逃避という嵐の前で「素っ裸」になりました。世界のどこかで金融不安が起きたら、韓国からドルが流れ出す可能性がぐんと高まったのです。

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