
(前回から読む)
突然、韓国が通貨スワップの締結を日本に頼んできた。中国と結んだスワップを頼りにできるのか、疑い始めたのだ。
中韓スワップは反故に?
8月27日、日韓両国が通貨スワップ再開で合意しました。
鈴置:厳密に言えば「再開に向け協議することで合意した」のですけれどね。
「日本のスワップなど要らない」と韓国は言っていました。態度を急に変えたのは、やはり米利上げ観測が原因ですか。
鈴置:韓国の政府もメディアもそう言います。でも、それは「誤魔化し」です。米国がいずれ利上げに動くことは前から分かっていた。韓国が日本に頭を下げてきた本当の理由は、中国との関係悪化です。
7月8日、韓国は地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の在韓米軍への配備を正式に認めました。中国は自分を狙う兵器として、絶対に認めるなと韓国に圧力をかけていました。
THAADは習近平主席が直接、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に命じていた案件です。中国のメンツは大いに潰れました。
中国はありとあらゆる手段を動員し「報復するぞ」と韓国を脅し上げました(「習近平の『シカト』に朴槿恵は耐えられるか」参照)。
「環球時報が中国政府に建議した『5つの対韓制裁』」をご覧下さい。ここには「韓国が通貨危機に陥っても通貨スワップを発動しない」とは書いてありません。
■環球時報が中国政府に建議した「5つの対韓制裁」
(1)THAAD関連企業の製品の輸入禁止
(2)配備に賛成した政治家の入国禁止と、そのファミリービジネスの中国展開の禁止
(3)THAADにミサイルの照準を合わせるなどの軍事的対応
(4)対北朝鮮制裁の再検討
(5)ロシアとの共同の反撃
でも、「こんなに露骨に報復を唱えるのなら、スワップの約束も反故にするのではないか」と、市場関係者なら誰もが考えます。それを一番懸念しているのは、韓国の通貨当局と思います。
ただ素直にそう言えば、日本に足元を見られると韓国は警戒しているのでしょう。一方、「米利上げ」を理由にすれば、これは日本にも影響のある話ですから「日韓双方のためのスワップ」と言い張れると考えたと思います。
Powered by リゾーム?