原油を止められるか

北朝鮮への原油を止める手は?

鈴置:今後、日米が国連安保理でそれを主張するでしょう。しかし、常任理事国の中ロが賛成するかは不明です。

 下手に原油を止めて北朝鮮経済が破たんすれば、国境を接する自分の国に難民がなだれ込む可能性が高いからです。仮に安保理で原油の輸出禁止が決まっても、これまた中ロがきちんと守るかは分かりません。

では、米韓合同演習の中止や在韓米軍の撤収を交換条件に北朝鮮と交渉する手は?

鈴置:米国や日本が要求する条件が見当たりません。先ほど申し上げたように、「核・ミサイル実験の中断」は意味が薄れました。

 交渉で実現可能なのは「第3国・テロリストに核・ミサイルを売らない」くらいです。米国にはともかく、日本にとっては国益に必須の条件とはいえません。

 何を条件に交渉をするにせよ、北朝鮮は高い値段を付けると思います。「合同演習の中止」くらいでは取引に応じないかもしれません。北は別段、交渉に応じなくともいいのです。

対話では安定を作れない

北朝鮮が求めるのは例えば、在韓米軍の撤収ですか?

鈴置:それを示されても、北が応じるかは疑問です。理由は2つあります。「北が核武装した」ことを思い出して下さい。

 在韓米軍の脅威は大いに減りました。北にとって、もちろん存在しない方がいいのでしょうが、核武装した北朝鮮が南側から攻撃される可能性はぐんと減りました。

 もう1つ、北朝鮮が交渉を受けないと思われる理由は「相手を信用しないから」です。米軍が撤収したとしても、いつ戻ってくるか分からない。仮に米国が韓国との同盟を破棄したとしても、同じです。

なぜ、北朝鮮は米国が約束を破ると思うのでしょうか。

鈴置:それは自分が破ってきたからです。朝鮮半島では約束は破られるものなのです。約束を破ることが力を見せつけることなのです。だから北朝鮮は外国との条約や合意とは関係なしに自らを守れる核を持ったのです。

 韓国もそうではありませんか。朴槿恵(パク・クネ)政権は自分が結んだ慰安婦合意をいとも簡単に破りました。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権はそれに加え、日韓国交正常化の際の基本条約も踏みにじり始めました。朝鮮人徴用工への補償まで要求し始めたのです。

 1965年の国交正常化当時「個人への補償は韓国政府が行うので、日本政府は韓国政府に一括して払ってほしい」と主張。日本が承諾したら、今になって「個人の請求権は消滅していない」と言い出したのです。

 話を戻します。北朝鮮が約束など信じない以上、いくら話し合っても安定した状態にはならないのです。仮に、瞬間的には妥協が成立したように見えても。