核さえ持てば全て解決

外交的な孤立を核武装で打破しよう、ということですね。

鈴置:その通りです。核を持てば、米国から捨てられても北朝鮮や日本に対抗できる。中国も核武装国へのイジメは、少しは手加減するかもしれない――との思惑でしょう。以下、「核武装」部分を訳出します。

  • 米国の著名な政治学者、ブレジンスキー(Zbigniew Brzezinski)博士は著書『戦略的ビジョン(Strategic Vision)』の中で、米国が中国によってアジアから追い出された場合の韓国の生き残る道を3つに要約した。
  • 1つは中国への従属、2つ目は核兵器の保有、3つ目は日本と協力し中国に対抗することだ。
  • 核武装は国際社会によって阻止される。日本との協力は常に中国を選好してきた歴史的な経験から考えて不可能だ。だとすれば、我々の選択は中国の属国になることだ。

「中国の属国になる」ですか?

鈴置:それは読者を挑発するために書いているだけで、本音はもちろん異なるでしょう。また金大中顧問は「日本との協力」を推薦しているわけでもない。

 ブレジンスキー博士は「日韓協力による中国への対抗」が難しい理由として「歴史的経緯」だけではなく「米国のバックアップが期待できないこと」を挙げています。原文(93ページ)を引用します。

  • Japan’s inclination to stand up to China without strong US baking is problematical at best.

 いくら日韓が協力しても米国の軍事力の支援――核の傘がなければ中国に対抗できない――というわけです。

 金大中顧問は3択のうち中国への隷属も、日本との共闘もダメというのですから「韓国は核武装するしかない」と訴えていることになります。

もう、大国の命令は聞かない

でも、「核武装は国際社会に阻止される」と金大中顧問は書いています。

鈴置:そう書いて見せているだけでしょう。朝鮮日報は今年2月から露骨な核武装の主張を控えました。社説もシニア記者もある日を期してピタリと書かなくなった。国益に関する何らかの配慮からと見られます。

 金大中顧問は北朝鮮の3回目の核実験の直前、2013年2月5日に「北の核実験、見学するだけなのか」(韓国語版)を書きました。そこで核武装を韓国の選択肢の1つに挙げました。

 そして「国際社会」つまり、核を保有する大国に対しては、以下のように猛烈に反発しました(「核武装して“奴隷根性”を捨てよう」参照)。

  • 強大国の優越意識丸出しの思考に異議を唱えたい。弱小国や途上国が核を持とうとすると、強大国は「危険性」とともに「核の効率的管理の不在」を指摘した。自分たちにはできるが、私たちには難しいとの指摘だ。

 韓国保守の大御所は、いざとなれば「韓国の核武装に対する国際社会の阻止」などケリ飛ばす覚悟と思います。こうなってくると、朝鮮半島から目が離せません。

 冷戦終結で孤立した北朝鮮が核武装に乗り出した。こりゃ大変、と見ていたら、今度は冷戦で勝ったはずの韓国が独りよがりの外交を展開して失敗。孤立したあげく核武装の下準備を始めた。

 日本は今や、太平洋の覇権を狙う中国と、2カ所で核武装の進む朝鮮半島の双方に同時に対応していかねばならないのです。

次回に続く)

大好評シリーズ第8弾!
Amazon【韓国・北朝鮮の地理・地域研究】【朝鮮半島のエリアスタディ】カテゴリ1位獲得!
米中抗争の「捨て駒」にされる韓国

米国と中国を相手に華麗な二股外交を展開し、両大国を後ろ盾に、日本と北朝鮮を叩く――。朴槿恵政権が目論んだ戦略は破綻した。
「北の核」と「南シナ海」をどうするか。米中が本腰を入れ、手持ちの駒でせめぎ合う。その狭間で右往左往する韓国は「離米従中」路線を暴走してきた末に「核武装」「米軍撤退」論で迷走を始めた。その先に待つのは「捨て駒」にされる運命だ。
日本も他人事ではない。「オバマ後」の米国がアジアから遠ざかれば、極東の覇権を狙う中国と、きな臭い半島と、直接に対峙することになる。岐路に立つ日本が自ら道を開くには、必死に手筋を読み、打つべき手を打つしかない。

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』に続く待望のシリーズ第8弾。6月13日発行。