青瓦台は無知なのか

恐ろしいほどの孤独感ですね。

鈴置:これまで「天才的な朴槿恵外交により、我が国は米中双方と史上最高の関係にある」と韓国人は信じてきました。それが一気に逆転したのです。孤独感はひとしおでしょう。もともとさみしがり屋の国民ですしね。

「進退両難」などと悩まずに、二股外交をやめてさっさと米国側に戻ればいいのではないでしょうか。

鈴置:ええ、朴槿恵政権がそうしないから問題だ、と金大中顧問は怒っています。以下をご覧下さい。

  • 青瓦台(大統領府)は、米国か中国かの問題に本心を見せない「曖昧戦術」を可能な限り取るつもりのようだ。何を隠そうとしているのか、無知ゆえにそうするのか、自信がないのか、敢えてそうするのか――それさえも分からない。

 朴槿恵政権は米中の間で身動きが取れなくなってしまった。決断を下せないので「曖昧戦術」という言葉を使って誤魔化しているのだ、と金大中顧問は怒ったのです。

 先に引用した東亜日報のホ・ムンミョン論説委員も「曖昧戦術」をやり玉に挙げました。その部分を訳します。

  • 国軍からは「戦略的曖昧さ」という外交用語が出始めた。「戦略的曖昧さ」とは現状維持が必要な時に使う政策であり、THAAD配備には合致しない。

 もっとも、朴槿恵大統領とすれば「ここで完全に米国側に戻ったら、中国に手ひどくイジメられるのは確実だ。国民はそれに耐えられるのか」と反論したいところでしょう。

国論分裂を防げ

結局、韓国はどうすればいい、と韓国のシニア記者たちは主張しているのでしょうか。

鈴置:ホ・ムンミョン論説委員の結論は以下です。

  • 親米派、親中派に分かれ、我々の内部が引き裂かれるようなことがあってはいけない。感情的な、反射神経的な対応を慎み、泰山のように重々しく対処すべきだ。

 「国論分裂を防げ」との叫びです。韓国人は「我々は国難のたびに国論が割れ、存亡の危機に直面した」と自戒の念を持っています(「韓国は『唐と戦った新羅』になれるのか」参照)。

 それだけに「また内部分裂して、国が滅びるのか」との恐怖感が頭をもたげているのです。金大中顧問の結論部分も同様でした。

  • 国の存亡に関わる重大問題を直接国民に問い、コンセンサスを築くという指導者の姿を見せることが今、大統領に求められている。

 大統領がリーダーシップを発揮して国論をまとめよ、との主張です。しかし、その国論が簡単にまとまらないから大統領も困っているのです。

 金大中顧問もそれは分かっているでしょう。興味深いことに、このコラムにはさりげなく核武装の主張が盛り込まれているのです。

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