「ずる賢く立ち回ろう」

そう言えば「中国との対立は日本に任せよう」などと唱える記事がありました(「中国に立ち向かう役は日本にやらせよう」参照)。

 朝鮮日報の鮮于鉦(ソヌ・ジョン)論説委員(当時)は「活火山の火口の役割は避けるべきだ」(2016年3月9日、韓国語版)で「中国と対立する役割は日本が負うべきであり、韓国は関係ない」と書きました。

  • 韓国にとって米国は「血盟」だ。3万6574人の米軍将兵が朝鮮半島で命を落とした。北朝鮮との軍備競争を避け、繁栄を享受できるのも在韓米軍のおかげだ。借りを返すにはほど遠い。とはいえ、いざこざの身代わりまで買って出ることはできない。
  • 韓国は北朝鮮を抑える「地域パートナー」との立場を越えたことはない。従って、アジアで米中間のいざこざの身代わりを進んで買って出る資格と責任は、日本にある。
  • 指導者には、時としてずる賢さも必要になる。それでこそ「活火山の火口」役を避けることができる。

 こうしたもの言いは、米国を怒らせるだけではありません。論理的に米韓同盟を突き崩します。「北朝鮮専用」と規定するなら、南北関係あるいは米朝関係が改善すれば、米韓同盟は不要になってしまうからです。

 仮に北朝鮮が非核化するか、あるいはしたことになったとします。すると、トランプ大統領が「北朝鮮はもう敵ではなくなった。韓国の保守までが『北朝鮮専用の同盟』と言っていたのだから、米韓同盟を打ち切るぞ」と言い出す可能性があります。

 その時、「ずる賢く立ち回ろう」と呼び掛けてきた鮮于鉦記者は、どうするつもりでしょうか。「中国を共通の敵としましょう」と言い出しても、通らないでしょう。誰もが「逆境に際して手助けしてくれなかった者を自分の味方にしたいとは思わない」のです。

北の「核の傘」に入る南

米中戦争はどちらが勝つのでしょうか。

鈴置:今のところは米国が完全に主導権を握っています。貿易戦争と呼ばれることが多いのですが、本質は金融・通貨の戦争です。米国は様々の圧迫を加えて人民元を崩落の瀬戸際に追い詰めています。

 中国が人民元を防衛するにも米ドルが要ります。ドルは米国しか印刷できません。つまり中国は米国製の武器で戦うしかないのです。米国の原油に依存しながら米国に太平洋戦争を仕掛けた日本と似ています。勝ち目は薄い。

 もちろん中国だって反撃のチャンスを虎視眈々と狙っています。でもそれは中間選挙の敗北や、スキャンダルによるトランプ追い落としなどで、今ひとつ確実性に欠けます。

 韓国の金載千教授や尹徳敏教授も、米国が勝つと判断したと思われます。そう判断したからこそ、中国に対し挑戦的な記事を書いたのでしょう。

中国からいじめられるリスクを2人はとったのですね。

鈴置:中国が勝利したら、中国からいじめられるだけではなく、国内でも袋叩きになるでしょう。韓国では、各党派が周辺大国の支持を背景に――外国を引き込んで権力闘争するのが普通です。米中戦争の勃発とともに、韓国内で米中の代理戦争が始まる可能性が高い。

では、文在寅政権は中国を引き込む?

鈴置:もちろん、この政権は米国よりは中国に近い。ただ、本当に後見役と頼むのは北朝鮮と思います。「誰の核の傘に入るのか」の視点で言うなら「北の核の傘」に入るつもりでしょう。「表・北朝鮮の非核化の行方」で言えば、シナリオⅣです。

次回に続く)

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録