保守派も中立化に賛成?

そう言えば、韓国は核武装の準備を着々と進めてきました。

鈴置:そうなのですが、日本人は忘れがちです(「韓国が目論む『2020年の核武装宣言』」参照)。

 保守の大御所、朝鮮日報の金大中(キム・デジュン)顧問もいち早く核武装を唱えてきました(「北の核保有で笑うのは中国」参照)。

 8月15日の「北の核を抱いたまま、生きて行けるのか」(韓国語版)でも、こう書きました。

  • 結局、我々の選択は以下である。第1に北の核との均衡をとるため我々も核武装するか、米国の戦術核を持ち込むかである。
  • 第2に、北朝鮮の核の段階的な縮小を条件に米朝の関係正常化、平和協定、米軍撤収と韓米同盟破棄を認める。
  • 3番目はどんな形での戦争、武力で北の政権を交代させることだ。
  • あれもだめ、これもだめと言うなら、北に屈服し膝を屈して生きることになる。そうやっても命を長らえることができるかは分からない。その時は米国が朝鮮半島を離れている時なのだ。

 親米保守の金大中顧問も、米韓同盟の延命には期待を持てなくなっているようです。韓国の保守派が、核武装を条件に左派政権の中立政策を追認する日が来るかもしれません。

中国も中立宣言

保守派まで中立を認めるとは!

鈴置:中国も「中立」を宣言しました。北朝鮮がグアム沖にミサイルを撃ち込む計画を発表した直後、中国共産党の対外宣伝紙、環球時報が社説で「中立」を主張しました。

 環球時報の英語版、Global Timesの「Reckless game over the Korean Peninsula runs risk of real war」(8月10日)から引用します。

  • China should also make clear that if North Korea launches missiles that threaten US soil first and the US retaliates, China will stay neutral.

 「もし北朝鮮が米国に対し先にミサイルで攻撃し、米国がそれに報復した際、中国は中立を保つと明確にしておくべきだ」――というのです。

中朝韓VS米日

米国の先制攻撃により米朝が交戦状態に突入したら、中韓両国が中立を宣言するわけですね。

鈴置:もしかしたら文在寅政権は、中国のこの中立宣言を見て追随したのかもしれません。

 韓国1国が中立を宣言しても効果がない。そればかりか、米国から「正気か」と殴られかねない。

 一方、中韓が一緒になって米国に圧力かければ、その先制攻撃をより強力に阻止できるはずです。もちろん、中国と同じ立場ですから、その後ろに隠れることができる。

 先ほど「そもそも米国が始める第2次朝鮮戦争を韓国が食い止められるのか」と聞かれ「難しい」と答えました。でも、中韓が組んで予防線を張れば、話は違ってくるのです。

 これから考えて、あるいは中国が韓国を陰で脅し、中立を宣言させたのかもしれません。先ほどのGlobal Timesの記事。引用部分には、以下が続きます。

  • If the US and South Korea carry out strikes and try to overthrow the North Korean regime and change the political pattern of the Korean Peninsula, China will prevent them from doing so.

 「もし米韓が攻撃を仕掛け、北朝鮮の体制打倒と朝鮮半島の政治構造を変更しようとするなら、中国は阻止する」です。

 これを読んだ韓国人は「米国について行けば、北朝鮮とだけではなく、中国との戦争が始まる」と震え上がったことでしょう。中国の尻馬に乗って「中立」を言いたくなったはずです。

 「グアム攻撃」はとりあえず棚上げされました。しかし北の核武装はどんどん進んでいます。衝突の可能性は依然として残っています。

 そして、北の核問題を引き金に北東アジア全体の地殻変動が始まったのです。第2次朝鮮戦争も「第1次」と異なり「中朝韓VS米日」の戦いになるかもしれません。

次回に続く)

■「北朝鮮の核危機」年表(2017年8月以降)
8月5日 国連安保理、石炭などの全面輸出禁止を含む対北朝鮮制裁決議を採択
8月6日 労働新聞「米国が核と制裁を振り回せば、本土が想像もつかぬ火の海になる」
8月7日 李容浩外相「米国の敵視政策が変わらない限り、核とミサイルで交渉しない」
8月8日 トランプ大統領「北朝鮮は世界が見たこともない炎と怒りに直面するだろう」
8月8日 WP「北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な核弾頭の生産に成功とDIAが分析」と報道
8月9日 朝鮮人民軍戦略軍「『火星12』でグアムを包囲射撃する作戦計画を慎重に検討」
8月9日 朝鮮中央通信、先制攻撃論に関連「決意すれば瞬時に日本を焦土化できる能力がある」
8月9日 マティス国防相「北朝鮮は体制の終わりや国民の滅亡につながる行動は中止すべきだ」
8月10日 北朝鮮戦略軍司令官「『火星12』4発は島根、広島、高知の上空を通過しグアム沖に着弾」
8月10日 トランプ大統領「グアムに何か起これば、誰も見たことのないことが起きる」
8月10日 GT社説「北朝鮮が米国に向け先にミサイルを発射した際、中国は中立を維持する」
8月11日 トランプ大統領「北朝鮮が浅はかな行動をとるなら軍事的に解決策する準備が完全に整った」
8月11日 トランプ大統領「極めて高レベルの追加制裁を考えている」
8月11日 米中首脳が電話会談
8月12日 米仏首脳が電話会談
8月14日 トランプ大統領、301条適用を念頭に中国の知財侵害の調査を指示
8月15日 金正恩委員長「米国の行動をもう少し見守る。危険な妄動を続けるなら決断」
8月15日 文在寅大統領「朝鮮半島での軍事活動は大韓民国だけが決めることができる」
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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。