のけ者の韓国

米韓の間に信頼関係などありませんね。

鈴置:米韓同盟は危機に瀕しています。7月31日と8月15日に日米首脳は北朝鮮に関し電話で協議しました。が「米韓」は行われませんでした。

 「3国協調」の形を整えるために米国の大統領は、必ず日韓双方の首脳とほぼ同時に電話で協議してきましたが、その慣行が崩れました。

 少し前までなら「外された」韓国が大いに怒ったでしょうが、最近は平然としたものです。保守系紙は「のけ者になった」と批判しましたが、文在寅政権はむしろ「日米韓」3国協調体制から外れたことにほっとした感じです。

 あまりに保守系紙が批判するものですから文在寅大統領は8月7日、トランプ大統領との電話会談に踏み切りました。もちろん内容はありませんでした。

 こんなに関係が冷え切ったところに、今回の「中立宣言」です。ことに米国の安全が北朝鮮のICBMで侵され、もっとも同盟が重要になった瞬間に、です。米国が韓国をますます信用しなくなるのは確実です。

韓国は米国との同盟を失ってもいいのでしょうか。

鈴置:「戦争に巻き込まれるよりはいい」と考える韓国人が多いと思います。左派だけでなく、保守の中にもそう考える人がかなりいます。この点に関する世論調査はまだ実施されていないようですが。

 それに、保守の中にも「どうせ米国には捨てられるのだ」と考える人が増えてきた。彼らは左派の大統領が「中立」を選んだことは批判するでしょうが、「では戦争に巻き込まれてもいいのか」と反論されたら黙ってしまうと思います。

韓国の奥の手は核武装

でも、このまま行けば北朝鮮が核武装する可能性が高い。

鈴置:ええ。平和的な方法での解決は難しくなっています。金正恩委員長が核を手放したら、その地位を失う可能性が高いからです。

 北朝鮮の生殺与奪の権を握る中国も、崩壊が自らに及ぶ混乱を恐れ、制裁には消極的です(「中国にも凄んで見せたトランプ」参照)。

 ただ韓国には奥の手があります。北朝鮮と和解し、その核を「民族共有の財産」とすることです。その夢を描いた小説はベストセラーになっています(「北の核ミサイルは日本を向く」参照)。

 傍から見ていると「南北の和解は簡単ではなかろうに」と思いますが韓国人、ことに左派の中にはこれを信じる人もいます。

 もう1つの手は、韓国も核を持つことです。最近の韓国の保守系紙では「北が持つなら我々も」と、核武装論が花盛りです。そして文在寅政権も、実は核武装の準備に熱心です。

 8月7日の米韓首脳電話会談で、文在寅大統領はトランプ大統領に原子力潜水艦の保有に関し、暗に了解を求めました。中央日報の「韓米首脳が電話会談、文大統領が韓国原子力潜水艦に言及」(8月8日、日本語版)など、韓国各紙が一斉に報じています。

 韓国が核弾頭を開発するには半年から数年間あれば十分に可能とされています。北朝鮮を射程に収めるミサイルはもう持っています。

 課題は核ミサイルのプラットフォームです。核武装する以上は、核の先制攻撃に耐え、核で反撃できる原潜が欲しくなるのです。

 原潜の保有はすなわち核武装を意味しますから、こっそりやって米国に計画を潰されるのを恐れ、敢えて了解を求めたのでしょう。