左派系紙もデモ隊も支持
すると結局……。
鈴置:文在寅大統領のこの発言は現実の状況から言って、有事の際の「中立宣言」にほかなりません。
文在寅政権はこの方向に行くだろうと予想はしていましたが、米朝間の緊張に耐えかねて、予想外に早く中立を宣言してしまった感じです。グアムを狙ったミサイルがソウルを直撃したのです。
「中立宣言」への反響は?
鈴置:当然というべきか、左派系紙のハンギョレは社説で褒め称えました。8月15日の「『戦争だけは防ぐ』 平和への意思を明らかにした文大統領」(韓国語版)は「米国と北朝鮮との『言葉の爆弾』の戦いにはっきりと反対する立場を明らかにした」と書きました。
同日午後には左派団体が「戦争反対集会」を催したうえ、米国大使館と日本大使館の前をデモ行進しました。韓国メディアによると6000人が参加。決議文には以下のくだりもありました。大統領の演説と軌を一にしています。
- 最近、米国政府が予防戦争、朝鮮半島での武力使用をうんぬんするが、誰にも朝鮮半島で戦争を起こす権利はない。
- 一触即発の軍事的危機を前に、敵対的な韓米合同軍事演習を中断せねばならない。
韓国には事前通告しない
なぜ、デモ隊は日本大使館にも向かったのでしょうか。
鈴置:「米国に従う戦争勢力」と認定されているからです。
そもそもの質問です。韓国が「第2次朝鮮戦争」の勃発を食い止められるのでしょうか。
鈴置:難しいと思います。軍事専門家の多くは、米国が北朝鮮を先制攻撃する際、韓国には事前通告しないか、したとしても攻撃寸前と見ています。
韓国から情報が漏れると疑っているからです。ことに文在寅大統領は選挙期間中に「米国から攻撃を通告されたら北朝鮮に知らせ、その挑発をやめさせる」と語っています(「米国に捨てられ、日本に八つ当たりの韓国」参照)。
もし、敵国に内通する国に戦争を事前通告したら、トランプ政権は米国人から非難されるでしょう。
8月14日にソウルで文在寅大統領らと会談した米軍制服組のトップ、ダンフォード(Joseph Dunford, Jr.)統合参謀本部議長は、直後の会見で「韓国の同意なしに戦争できるか」と聞かれました。
聯合ニュースの「ダンフォード議長『米国はグアムを攻撃された時は断固と対応』」(8月14日、韓国語版)によると、ダンフォード議長は「それは政治的な決定となることだろう。しかし、我々が下すすべての決定と論議は同盟国と協議している」と答えました。
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