米韓同盟を破壊するチャンス

中国が北に核を放棄させたくないもう1つの理由は?

鈴置:北朝鮮に、米国まで届くICBMの配備を諦めさせると中国は「得べかりし利益」を放棄することになります。

 北朝鮮が米本土を核攻撃できるようになると、韓国人は米韓同盟を疑うようになります。「もし北朝鮮が核で脅してきた場合、米国はワシントンやニューヨークを核攻撃されるリスクを冒してまで韓国を守ってくれるだろうか」と考えるからです。

 要は、米国の「核の傘」の威力が衰えるのです。専門用語を使えば「核の拡大抑止が効かなくなる」わけです。

 韓国では自ら核武装するという案と、中国の核の傘を頼ろうという案が急浮上するでしょう。すでに前者は堂々と語られるようになっています。これは『孤立する韓国、「核武装」に走る』(2016年10月刊)でじっくり論じています。

 後者は大っぴらには語られにくいでしょうが、中国への外交的な接近・密着という形で、実質的に進むでしょう。

「中国の核の傘」なら信頼

中国の核の傘は米国の核の傘よりも確実なのですか?

鈴置:確実です。北朝鮮が米国を核攻撃する可能性は低い。なぜなら、米国に核で反撃されたら国が消滅するからです。

 しかし、核を使うぞと北朝鮮が米国を脅しただけで、米国が本気で韓国を守るのか「疑い」が生まれます。韓国は動揺し、米国との同盟を信頼できなくなります。

 一方、北朝鮮は中国を核攻撃するぞと脅すことさえできません。経済的に生殺与奪の権を中国に握られているのです。そんなそぶりを見せただけで政権を倒されてしまうでしょう。韓国から見れば「中国の核の傘」は「米国の核の傘」よりもはるかに信用できるのです。

 話をまとめます。中国が北朝鮮の核武装に歯止めをかけると、せっかく中国側に転がり込みそうになっている韓国の動きをも止めてしまうのです。

 2017年5月に反米親北の文在寅(ムン・ジェイン)政権が誕生し、米国からの遠心力が働き始めました。この大統領は「反米書籍」を国民に推薦したばかりです(「『米帝と戦え』と文在寅を焚きつけた習近平」参照)。中国がこの機会を見逃すはずがありません。

 韓国が米国を離れ中国に傾けば、日本も動揺します。「日米同盟をやめて中国と同盟しよう」とまではいかないにしろ「米中等距離外交」を主張する声が出てくるのは確実です。すでに、民主党政権時代に「米中等距離」を目指した実績が日本にはあるのです。

首のすげ替え論が登場

そんな中国の事情を米国は理解しているのでしょうか。

鈴置:もちろんです。北朝鮮のICBMの試射以来、米国で「金正恩のすげ替え論」が公然と語られるようになりました。それも中国のお家の事情と、大いに関係していると思います。

次回に続く)=8月10日掲載予定

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。