難民で中国だけが損

しかし、国連安保理が「強力な制裁決議」を採択しました。戦争は避けられるのでは?

鈴置:「強力」と言っているのは採択に関わった外交関係者だけです。自画自賛です。この制裁の効果がどれだけ上がるかは疑問です。まず、中国やロシアが本気で制裁を実施するかは不透明です。

 仮に完全に実行したとしても、実効がどれだけあるか怪しい。北朝鮮の輸出を止めると言っても全体の3分の1程度。外貨収入を3分の2に減らされたからといって、北が核・ミサイル開発を諦める可能性はまずない。少なくとも、即効性は期待できません。

 米国が求めた石油の対北朝鮮輸出の禁止を盛り込めば、かなり威力を発揮したことでしょう。これをやられると北朝鮮経済はマヒしますし、ミサイルの燃料も確保しにくくなったのですが……。中国などの反対で盛り込めませんでした。

なぜ、中国は石油の禁輸に反対したのでしょうか。

鈴置:中国の国益を大きく損なうからです。禁輸で北朝鮮経済が混乱すれば、難民が中国になだれ込むのは確実です。

 トランプ大統領は「中国ならできる」とツイートしました。そりゃできますが、やったら「中国だけが損を見る」のです。

 習近平主席がもしツイッターを愛用していたなら「米国は自己中心的だ。人の身になって考えろ!」とつぶやいたと思います。

第2のミャンマーに

中国の立場からすれば当然ですね。

鈴置:だから「北朝鮮の石炭などの輸出を止める」との国連での約束も、本当に効果が出そうになったら、中国は手を緩めると思います。

 中国にはあと2つ、本気で経済制裁に踏み切りたくない理由があります。まず、北朝鮮を「米国側の国」にしかねないことです。

 北朝鮮が核・ミサイル開発を諦めたら、米国が救いの手を差し伸べます。米国は旧敵と良好な関係を築くのが得意です。ドイツや日本、中国ともそうでした。

 北朝鮮も米国といい関係を築くことが、隣の超大国の干渉を避ける最大の手段と考えています。

 もし米朝が一気に関係を改善したら、中国外交の屈辱と言われるミャンマーの「離中接米」の二の舞です(「次は北朝鮮に触手?米国、中国包囲網つくりへ全力」参照)。

 経済制裁を通じて北朝鮮に核を放棄させたら、中国は米国の強力な友好国を自分の下腹に抱えることになりかねない。「骨折り損のくたびれ儲け」どころか、外交上の大失態です。