日本は化外の民

本当に朴槿恵批判は中国でタブーだったのですか。

鈴置:韓国人の思い込み、あるいは希望的観測です。しかし、それだけにショックが大きかった。

ここに至って、さすがに韓国人も「シカト作戦」に気づき始めたでしょうね。

鈴置:そのようです。もっとも、中国の「シカト」に韓国の大統領がどこまで耐えられるかは疑問です。これは中国もよく分かっています。

 「THAAD配備を拒否するまで、朴槿恵とは会ってやらないぞ」と暗黙裡に脅し続けることでしょう。

「どうぞご勝手に」と中国に言い返せば済む話ではないですか。わざわざ言わなくとも、知らん顔しておけばいい。

鈴置:韓国には中韓首脳会談が必要なのです。それを拒否された大統領は、国を危うくする指導者と国民に見なされ、支持を失っていくでしょう。

 昔から、韓国人は宗主国との距離で自分の国の地位を確認してきました。中華帝国の中で「上から何番目の朝貢国か」が極めて重要だったのです。中国から「国家承認」を得られない王様は国民の支持を失います。

 ちなみに、韓国人の日本に対する軽侮は、日本が中国に朝貢しなかったことから来ています。日本人は「中国の属国になるなんてとんでもない」と思います。一方、韓国人は心の底で日本人を「冊封体制に入れてもらえなかった野蛮な、化外の民」と見ているのです。

そう言えば、天安門の軍事パレードでも韓国人は序列を異様に気にしました。

鈴置:ええ、「プーチン大統領に次いで2番目に習近平主席に近い席を我が国の大統領は与えられた」と韓国メディアは大喜びしました。大統領の支持率はなんと、一挙に5ポイントも上昇したのです(「統一は中国とスクラム組んで」参照)。

次の大統領は中国が決める?

中国に揺さぶられると、朴槿恵大統領がTHAAD拒否に転じる可能性があるということですね。

鈴置:配備賛成派はまさに、それを恐れています。大統領はもともと配備に消極的でした。容認に転じたのは中国への失意から、との見方が韓国では一般的です。

 多くの韓国の識者が「(2016年1月6日の)北朝鮮の4回目の核実験の直後、朴槿恵大統領が接触を求めたのに習近平主席から無視されたことが大きい」と説明します。

 だから中国から脅されるだけではなく、逆に習近平主席から優しい顔を見せられたら、朴槿恵大統領が態度を急変させるのではないか――と懸念する人もいます。

韓国をもてあそんでいますね、中国は。

鈴置:韓国にとってもっと大きな問題は、現職だけではなく次期大統領選挙も中国の「金縛り」にされるであろうことです。

 2017年12月投票の大統領選挙では「THAAD配備」が争点となる可能性が高い。当然、中国と首脳会談もできず、制裁も防げない大統領候補――つまり、賛成派はかなり不利になります。

 選挙戦の最中に中国が韓国への報復を発動すれば、THAAD反対派を大きく後押しできます。中国は韓国の次の大統領の「任命権」を持ったと言えるのです。

 中国の皇帝は、高麗や朝鮮など朝貢国の王を任命する権利を持っていました。その冊封体制が今、よみがえってきた感じです。

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